2020年02月04日

●第163回

不完了体というのは動作事実の有無の確認、つまり動作そのもので、ニュアンスがないものである。つまり、命令形においても、動作が行われるかどうかは個人的にはどうでもいいけど、一応そういうことになっているからしておこうという感じである。テレビショッピングや、視聴者向けのテレビのクイズで、司会者が「メモのご用意」というのは、メモをした方がいいですよ、つまり一応言っておこうかということで、絶対にメモしてもらいたいと司会者が思っているわけではない。これは子供にたくさん買い物を頼むときに、忘れてもらっては困るというニュアンスのある「メモしておきなさい」という命令とは違う。この話し手の個人的にはどうでもいいけど、一応言っておこうかと聞き手に動作の選択の余地を与えるのが不完了体動詞命令形である。しかし、促しはその場の雰囲気や条件に沿ってということで無条件で行われるため、期限を限定した条件節と共には使えない。

(女店員が買い物客に、「次の方、どうぞ」)Продавщица – покупателю: говорите. <店で行列に並んでいるときなどで、何が買いたいのかを尋ねる、つまり買い物客に注文するきっかけを与える店員の言葉>

命令法の促し(着手)の用法には不完了体命令形を使うが、会話でよく聞く、Давай, давай(さあさあ、やれよ)!とかдавай + 不完了体命令形(さあ~しろ)<давай(те) + 不完了体不定形〔または完了体一人称複数〕(~しましょう)とは別の用法>に不完了体命令形が使われるのも、この用法だからである。

(さあ喧嘩をやれよ)Давайте деритесь!

下記の文はすべてもうそろそろというニュアンスの促しであり、動作のきっかけを与えている。

(奥〔の方〕へどうぞ)Проходите, пожалуйста. <来客に対して>
(どっちを取るの〔選びなさいよ〕、家族、それとも愛人?)Выбирай – семья или любовница?
(ドアにノック。お入りなさい)Стук в дверь – входите (войдите). <不完了体動詞命令形входитеであれば、促しの用法で、事前に来訪が分かっていたことになるし、完了体動詞命令形войдитеなら、新しい事態や情報が出てくる(事前に来客を知らされていなかった)場合の、入ってよいという許可となる>

この「もうそろそろ」は切迫感に通じ、「すぐに~せよ」というニュアンスをもつことになる。

(さっさとやってください)Шевелитесь. <= Торопитесь. 動詞の語義から来る切迫感そのものの用法である>
(奴をつかまえろ!)Держи его! <カッパライやスリに対して>
(おい、くそったれ、だれに雇われたのかしゃべるんだ!)Говори, гадина, кто тебя завербовал? <文の尋問などで不完了体動詞命令形が来るのも、相手が自白するのは当然という意識が話し手にあるからであり、そこから促しや着手の用法となり、すぐに話せという切迫感が出てくる>
(かかれ)Действуй! <〔(すぐに)行動せよ〕とか〔(すぐに)やれ〕ということだが、警察や軍隊などの作戦行動の際、任務〔すべき内容〕が伝達されていれば、後は号令だけとなり、そういう意味で不完了体動詞命令形が来る。8-13項にあるДавай(те)!、Валяй(те)!〔俗語〕としても同義で、切迫感の用法でもある>

切迫感が強まれば焦燥感となり、苛立ちを示すということにもなる。

Posted by SATOH at 2020年02月04日 09:11
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