2020年02月04日
●第161回
(ナターリア・アナトーリエヴナ、そこで何をなさっていらっしゃるのですか?とにかくおかけください。ロシア功労建設者称号が授与されますよ。受賞にクレムリンのプーチンのところに行くんですよ)Наталья Анатольевна, вы там что делаете? Сядьте. Вам дают "Заслуженного строителя России". За наградой поедете в Кремль, к Путину".
上の文で完了体命令形のСядьтеを使っているのは、話し手が聞き手に、主観的な意味合いから、まあ落ちついて、びっくりして腰を抜かさないようにという意味で、完遂の意味の「まずは、おかけなさい」を使っている。しかもдаютは予定の用法だということは明らかである。поедетеも聞き手にとっては、予定でも何でもなく、寝耳に水であるために、完了体未来形が来ている。
(この通知はメールで届いた。すぐ返事を用意しなさい)Это сообщение получили по электронной почте. Срочно подготовьте ответ! <Срочноが来ているのに完了体動詞命令形が来ているのは、新規の情報だからである。切迫感の用法は動作が行われるのが周囲の状況において自然であるという前提が必要である>
(昼食を取ったら、すぐにもどれ)Пообедай и сейчас же возвращайся.
上の文でсейчас жеという、あたかも時間を示す状況語があるのに、不完了体動詞命令形が続くのは、私の唱える説「不完了体は話し手が動作遂行の結果として、時間軸の特定かつ不動の一点をイメージしない」と矛盾すると思われるかもしれない。сейчас жеは「今すぐ」という意味であって、今というこの瞬間を示していない。今というこの瞬間は常に動いているわけで、不動の一点ではないし、今を広く解釈して、一瞬後のいつかとすれば、1分後か、2分後か、はたまた10分後か知らないが、特定できない以上不動の一点ではないことは明らかである。そのため不完了体が用いられても問題は生じない。この用法は命令法の切迫感か、それに動作の様態の強調が組み合わさったものであろう。次の完了体動詞命令形の例文と比較してほしい。
前の文もそうだが、命令法における動作が次々続く順次的用法では、先の動作の結果を次の動作が受けるかどうかによって、次の動詞の体が変わって来る。完了体の順次的用法は前の動詞の結果が次の動詞に及ばないくらい早く連続して続く場合に使われ、依頼の意味の別個の新規の動作がそれぞれ続く時ぐらいであろう。一方、前の動作の結果を次の動詞が受けるときは、初めに完了体命令形で、その後は前の動詞が作り出した文脈による促し(着手)の意味で、不完了体命令形が続く場合の方が多い。
(この手紙を読んで、彼女に渡して下さい)Прочитайте это письмо и передайте ей.
(水をたくさん汲んだら、すぐに戻るんだ。いいな?)Наберите воды и сразу же возвращайтесь, хорошо? <возвращайтесьが不完了体なのは、水をたくさん汲んだ以上、戻るのが当然だという意味の促し(着手)の用法であり、切迫のニュアンスもある>
逆の場合は稀だが、ないこともない。
(座って、何か面白い話をして)Садись и расскажи мне какую-нибудь забавную историю. <促しと新規動作の組み合わせ。сядьと完了体命令形も可能であり、その場合は順次的用法となる。補語がなければ、Садись и рассказывай.と促しの意味の不完了体命令形を続ける方が自然である>
同じ動詞の体のペアが続く場合は、最初に新規の事柄ということで完了体動詞命令形が来る場合は、次の命令形は動作の指示だけだから、不完