2020年02月03日

●第152回

例示的用法を否定文で用いれば、3-2-2項の否定の強調や3-2-3項の不可能という用法につながる。その例文を次に挙げる。例示的用法は条件節などの従属節で用いられことが分かる。

(ヴィークトルはきちんとした人だ。絶対に遅れないし、いつも時間に間に合う)Виктор человек точный: никогда не опоздает, всё вовремя успеет. <例示的用法の否定版で、完了体未来形は理由を示す従属節で用いられている>
(安全ベルトを締めないと、罰金を払うことになる)Не наденешь ремень безопасности - заплатишь штраф.
(渋滞にはまらなかったら、すぐに行くよ)Скоро приеду, если в пробках не застряну. <動作が順次的に行われていることを示す完了体の用法でもある。не застрянуは、これから渋滞にはまらなかったらという、例示的用法である>

点未来(完遂的用法)の否定版では、完了体動詞未来形は具体的な1回の動作がない事を示し、不完了体動詞現在形(予定の用法)はそういう予定がないことを示しているだけで、実質的な意味に変わりはない。不完了体は厳密な意味で完了体が使えない現在の時制を除けば、本質的に具体的な1回の動作は扱わないので、具体的な1回の動作の時に不完了体未来形は使えない。

(彼はロンドンに行かない)Он не уедет в Лондон.
(彼はロンドンに行く予定はない)Он не едет в Лондон.

この用法を否定文で用いると、文脈によっては、未来の一つの時点における動作が行われないか、あるいはその一つの時点を近接未来ととらえると、広い意味での今の時点での動作の否定(否定の強調3-2-2項)となる。否定の強調を現在の時制で扱い、点未来(完遂的用法)を未来の時制で扱っているのは、日本語が動詞の活用という事では現在と未来を区別しないということと、完了体動詞未来形は今現在この一瞬ではない、広い意味の現在(一瞬以降である近接未来)を含む未来を扱うからである。
 完了体未来形というのは一瞬後か、かなり後かは別にして未来に動作が起こり、これを否定するわけだから、現在の状態を示すことはできないことになる。そのため現在の状態を示すのであれば、被動形動詞過去短語尾の否定を現在の時制で使わざるを得ない。これなら完了体だから具体性を示すことができるわけである。状態であれば、状態動詞の否定も可能性としてはあり得るが、その動作を否定しても、不完了体だから、慣用(一般性)という概念が邪魔をして、個別の具体的な事柄は表現できないと思われる。
完遂の意味を強調すると「必ず~する」という意味になるが、その場合でもне преминуть + 完了体不定形と完了体不定形が来る。

(必ず報告する)Я не премину сообщить.

4-2-2 順次的用法 → 完了体動詞未来形

二つ以上の動作がそれぞれ完了体動詞未来形で示されるときに、継時的にあまり間をおかずに次々起こる動作を示す用法で、動作の焦点が次々に移動することになる。この場合、次の動作は最初の(あるいは前の)動作が完了した後でのみ成立可能となるので、共に完了体を使うという論理である。2-2-1-4項参照のこと。

(下に降りて、角まで行き、左に曲がってください)Вы спуститесь вниз, дойдёте до угла и повернёте налево.
(僕が着いたら、話しをしよう)Приеду – поговорим.

Posted by SATOH at 2020年02月03日 20:24
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