2020年02月02日
●第125回
けで、この内容の具体化が過去や未来の時制で進めば、完了体との使い分けに悩む場面も出てこよう。文につく補語は直接補語(対格)、間接補語(与格)の他に、TPO(いつ、どこで、どのように)が考えられるが、完了体にとって重要なのは、「いつ」であり、それも期間периодではなく、時間軸の一点момент времениである。一方、不完了体では「いつ」は「いつ」でも期間периодが扱う対象となる。
2016年に逝去されたボンダールコБондарко先生の『機能文法の原則とアスペクト研究の諸問題』Принципы функциональной грамматики и вопросы аспектологии, URSS, 2016から抜き出して、動作事実の有無の確認(動作の名指しобообщённо-фактическая функция)の用法の特性につき解説する。
動作事実の有無の確認というのは、動作に関する最大限に一般的(非具体的)情報を伝えることにある。
a) 動作の有無に関する情報
(彼に手紙を書きましたか?)Вы ему писали?
b) 特定な状況であれ、一般的な状況であれ、こういう場合には一般的にこうなるというような情報
(こういうものと別れるの残念だ)Жаль расставаться с этой вещью?
(果たしてそのような言葉を投げかけてよいものだろうか)Разве можно бросать такими словами?
動作事実の有無の確認の用法かどうかを見分けるポイントは次の通り: < >内は私のコメント。
1. 動作が1回であるか反復であるかを問題にしない。 <ということは1回の動作でも示せるということになる>
2. 結果の達成かそうでないかを問題にしない。 <聞き手にとってはどっちでもいいけれどというニュアンスがある>
3. 動作の有無そのものが強調されており、結果の存続とは一線を画す。
4. 順次的動作ではない。
(失礼ですが、どこでバナナをお求めですか)Простите, где вы покупали бананы? <バナナを持って歩いている人に対して。みなし(見立て)反復2-1-6-1項参照>
「アンドレイは電話してきたか?」は不完了体でも完了体でも露訳可能であるが、ニュアンスの違いはある。
Андрей звонил? <不完了体の典型的な動作事実の有無の確認の用法であり、この発話を見る限り、聞き手は電話があったかどうかには特に関心はない>
Андрей позвонил? <完了体の持つ叙想(主観的)ニュアンスがあり、電話してくれるのを期待していたというニュアンス>
不完了体の動作事実の有無の確認は、過去の時制では完了体の結果の存続перфектと、未来の時制においては完遂の用法と対立する。
4-1-1-2 述語に文の焦点(中心的意味や役割)が来ない場合
動作事実の有無の確認というのは、動詞が主観的ニュアンスを持たないということで、文中の述語に文の焦点が来ずに、補語や主語に来るということになる。未来の時制では、文の焦点がどこにくるかを見た方がどの体を用いるかが分かりやすい。不完了体動詞未来形を使うのは、述語に文の焦点が来ないときであり、それを目印にした方がよい。これは刺身のつまのような用法で、不完了体の特徴である回りの雰囲気に合わせて動作