2020年01月31日
●第90回
体現在形一人称でも言える。ただこの場合、прошу(お願いする)と、попросить = позвать, пригласить(呼ぶ、招く)とは意味が異なる。
一人称のЯ прошу (Мы просим) は遂行動詞だが、不完了体ゆえに回りの雰囲気に合わせての動作という意味合い(任意性)がある。ところが同じ一人称のЯ попрошу (Мы попросим) は完了体未来形(完遂的用法)であり、回りの雰囲気には頓着せず、具体的な新規の動作を行うことから、聞き手の事情を斟酌しないという強制のニュアンスが出てくる。
(試験の準備をするので助けて下さい)Я прошу вас помочь мне подготовиться к экзаменам.
(指示通りきちんと行動するようお願いします)Я попрошу вас действовать строго по инструкции.
上の文のうち始めの文はお願いベースであり、2番目の文は丁寧であっても命令である。日常でпопроситьをよく使うのは次のような文である。
(身分証を拝見)Попрошу документы. <警察官がよく使う>
(切符を拝見いたします)Попрошу билеты. <駅員がよく使う>
これらの場合はпоказать, предъявитьが省略されているとはいえ、お願いではなく、見せなかった場合は署や、駅の事務所に任意かどうかは別にして、同行を求められるという意味での命令である。一方Прошу! は部屋などに案内される場合に使われるが、あくまで任意のお願いベースであり、行かなくてもかまわない。
предложитьにも文脈によっては同様な命令の用法がある。Пассажирам предлагается покинуть самолёт.というのは「乗客に提案している」わけではなく、「乗客に飛行機から離れるよう指示が出ています」という意味で命令である。
3-1-4-7 動詞以外の遂行動詞的用法
идтиは遂行動詞としては普通使わないが、согласен(いいだろう、OKだ)という意味で、Идёт.と言えば、それは遂行動詞であり、8-1-2項のЕстьも遂行動詞である。動詞以外にも遂行動詞的用法がある。例えば、「同意します(賛成です、OKです)」というときの、Согласен. (Хорошо. О'кэй. Годится)や、述語としての、За.(賛成)とか、Против.(反対)やБлагодарен.(感謝します)、Понятно.(分かりました)、просьба + 完了体動詞不定形(~お願いします)などもそうである。これらのように述語用法があるものには、発話して動作が始まり、発話の終了と共に動作が終わるという意味なら遂行動詞的用法であるということになる。
(シシェルコーフスカヤ駅、終点です。これから先へは参りません。どなたさまも、こちらでお降りください)Станция "Щелковская" конечная. Поезд дальше не пойдёт, просьба освободить вагоны.
叙想語にも遂行動詞的用法がある。船舶用語で、「エンジン停止(エンジンを停止せよ)!」)というときに、Машина больше не нужна! <= Остановите машину.>というが、これなどもそうであろう。
3-1-4-8 遂行動詞と否定
具体的な1回の動作の否定には完了体が用いられ、動作が一切ない(1回の動作の否定か反復動作の否定かは文脈による)ことを示すのが不完了体の否定である。そのため不完了体である遂行動詞を否定すると、この動作が一切ないという風に理解されるため、遂行動詞的用法で、遂行動詞の否定はあり得ないと思われる。遂行動詞というのは、今現在の発話の時