2020年01月31日
●第89回
5の評価解釈型動詞の完了体の過去形に出やすいので、その違いについて参照願う。
3-1-4-5 語義による区別の仕方
「報告する」という動詞もそうだが、完了体動詞未来形というのは一瞬後の未来でも、明日でも、1年後でも動作を遂行するという意味で使う。ここで問題なのは遂行動詞との違いをどう区別するかである。遂行動詞は発話の瞬間から動作の終了を目指す動詞群であり、完了体動詞未来形が一瞬後に動作が開始される場合は、実質的に区別がつきにくい。例えば、同じ「報告する」でも上司に対して報告するという意味のдокладыватьで見てみよう。
(すべて順調であり、もうすぐ目標に到達すると無線にて報告申し上げます)Я по радио докладываю, что всё в порядке, скоро выходим на цель.
上の文は発話の一瞬後ではなく、発話の瞬間から報告という動作の内容を伝え初めて、それから終わるわけで、これが遂行動詞の特徴であり、日本語にも対応する。意識の中で動作の開始が、一瞬後か発話と同時かをイメージすることが非常に重要であり、動作の内容はо + 前置格、ないしはчто以下で示されることが多い。遂行動詞は不完了体動詞現在形で用いられるが、これにдоложуと完了体動詞未来形を使えば、一瞬後か、1時間後かは別にして、とにかく発話の時点ではなく、後で報告するということになる。
これとは反対に日本語では未来の意志を示すのに、ロシア語では過去で示される例がある。検事の論告の最後とか、演説や公的な意見の陳述の最後に「これで終わります」、「以上です」というのをロシア語では、Я кончил(а). と完了体動詞過去形の結果の存続の用法を使う。遂行動詞とは対照的に、伝える内容はこの発話の前に語られていて、終わりだと言う動作のみを伝えていることになる。同じ「終える」でも、次のような例は終える内容を示しているので遂行動詞である。
(了解しました。交信終了します)Вас понял хорошо. Связь кончаю. <船舶同士の交信で>
現在の時制で丁寧表現に仮定法を用いることは会話でもよくあり、遂行動詞と互換性のある場合もあるが、体の出現の仕方に違いのある場合もある。
a) (日曜に映画にご招待申しあげます)Мы предлагаем вам в воскресенье пойти в кино.
b) (お静かに願います)Я прошу соблюдать тишину.
c) (夏に南に行って来るようお勧めします)Я советую вам летом съездить на юг.
これら三つの文に仮定法を使っても、やや丁寧な感じがするというニュアンスはあれど、意味に変わりはないが、その場合a) предложили бы 、b) просил (а) бы 、c) советовал (а) быとそれぞれ違う体になる事に気がつく。これはb)とc)の動詞が体のペアとしては不完全な、後述の7-2項の動詞群であり、不完了体優位(不完了体から完了体が発生したと考えられる)の動詞群だからであろう。
3-1-4-6 проситьとпопроситьの一人称での使い分け
電話で「レーナをお願いします」は、Попросите, пожалуйста, Лену.と命令形で言うのが普通だが、Я прошу вас позвать к телефону Лену.と不完了