2020年01月31日

●第88回

3-1-4-3-1 呼応的用法

идтиとбежатьという定動詞現在形一人称に代表的に見られ、「呼ばれたから行く、来る」という用法だが、日常会話ではよく耳にし、遂行動詞の告知型の変形と思われる。つまり、「行く」という動作そのものというよりは、動作内容を伝えていると考えるべきである。また定動詞は不完了体動詞であり、不完了体動詞には本来主観的な要素が欠如しているわけで、これらの動詞を用いるためには何かサイン(合図)が必要である。「助けて」という呼び声でも、宅配の人がドアのベルが鳴らすのでも、会社で、「~さん、電話ですよ」でもいいが、それを合図に「今行きます」Иду.(急ぐ時はБегу.)と告知することになる。気持ちの上では、この発話の終了直後には電話や、ドアなどにたどり着いているというニュアンスがある。ゆえに、この用法は予定の意味ではなく、不完了体の基本的な用法である場依存型である。Пошёл (Пошла)と完了体過去形の時制の転用を使うと、出発したというニュアンスのみで、場所を示す補語がない以上、電話やドアに辿り着いたというニュアンスは出せないことになる。

「だれか助けて」- Помогите, кто-нибудь!
「今行くぞぉー」- Иду-у-у!

 この他にも次の文の動詞にも遂行動詞としての告知のニュアンスがある。

(俺は手を引く)Я выхожу из игры. <不完了体を使っているので、主語である俺は状況から判断して手を引くのが当然と思っていることが分かる>

3-1-4-4 結果の存続の用法との違い

 結果の存続には、「たった今~した」という意味と、動作はとっくの昔に終わっていて、その結果である状態が現在まで続いているという二つの解釈が可能である。ところが遂行動詞は、動作は発話で始まり、その発話と共に終わるわけだから、とっくの昔にというニュアンスはないという違いがある。しかし、会話などにおいて実際上は、例えば「了解しました(了解です)」という意味では、次の二つの文は同義であるが、不完了体現在形の方は場の雰囲気に沿ってというニュアンスがある。

(分かりました)Понял. <完了体過去形の結果の存続>
(分かります)Понимаю. <遂行動詞>

「いいですか」という相手の注意を促したり、強調したりするときの挿入句понимаете, понимаешьや、(そうこなくっちゃ)Вот это я понимаю!も遂行動詞由来である。

(どうしてあなたをお呼び立てしたのかお分かりですか?)Догадываетесь, зачем я вас вызвал?

遂行動詞で始まる上の文を仮にдогадалисьと完了体動詞過去形にすれば、「たった今察した」という意味と、「とっくの昔に察していた」という二つの意味から文脈によって選ぶことになる。それに完了体というのは場独立型だから、独自の考え方で理解したということになり、不完了体のように、話し手がその場の流れに沿って理解したというニュアンスはない。
遂行動詞のペアの完了体動詞過去形は、結果の存続というよりは点過去で使う方が多いように思われる。一方、結果の存続の意味は3-1-

Posted by SATOH at 2020年01月31日 15:13
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