2020年01月31日

●第82回

(1カ月の猶予を与えます。その間に万事を軌道に乗せるようにしなければなりません)Мы даём вам сроку месяц. За это время вы обязаны наладить все дела. <даватьが抽象的に与えるを意味する場合は遂行動詞として使える。срокуは部分生格。二つの文が続いており、二つ目の文で動作は終了していなければならないために、完了体未来形の完遂的用法は使えないことになる>

(『命と自由は保証する』と彼は約束した)Мы гарантируем вам жизнь и свободу - пообещал он.
(命と自由は保証すると約束した)Я обещал гарантировать жизнь и свободу. <гарантироватьとобещатьは共に完了体・不完了体同形の動詞だが、この場合は共に完了体としての用法である>

 二つ目の文は命と自由を保証するのは未来の動作ということになる。つまり、間接話法や不定形を使った文、つまり従属文や動詞の不定形では遂行動詞の意味を出せないので、そのニュアンスを出すためには最初の文のように直接話法を使う必要がある。

3-1-4-2 過程や状態を示す動詞との違い

 過程の動詞は動作が遂行途中である事を示すが、遂行動詞における動作は全一的なもので、1/2の動作や1/3の動作という観念はなく、動作全てを発話の始まりから終わりまでを過程のニュアンスをもって示す、いわば時間的に非常に短い志向の動詞に近いと言える。過程のニュアンスがあるので、動作の全一性を示すが不完了体現在形が用いられることになる。過程の動詞は補語をつければ別だが、状態動詞と同様動作の始まりと終わりを示さない。遂行の動詞は動作の終了後、その結果が存続していることを示している。

(彼は今階段を上っているところだ)Он сейчас поднимается по леснице. <過程の動詞>
(仲間のことは保証する)За ребят ручаюсь. <遂行動詞>
(彼は草の上に横になっている)Он лежит на траве. <状態動詞>

3-1-4-3 遂行動詞の種類

 オースティンによる英語の遂行動詞の種類は、言明解説型〔告知型〕(сообщатьなど)、行為拘束型(обещать〔約束する〕、ручаться〔保証する〕など)、権限行使型(объявлять〔宣言する〕、открывать〔開会する〕など)、判定宣告型(оценивать〔評価する〕など)、態度表明型(благодарить〔感謝する〕、поздарвлять〔祝う〕など)の5つであり、一言で言えば意思伝達型の動詞である。それぞれロシア語にも対応すると思われるが、英語の遂行動詞は一人称、現在時制、平叙文のみで用いられるという。ロシア語でも概ねそうではあろうが、一人称以外でも、話し手の意向を反映しているような文については、下記に例を挙げるように、三人称の平叙文でも使われ、二人称の疑問文でも用いられることがある。
「お願いする」、「命令する」、「禁止する」、「約束する」、「連絡する(伝える、知らせる)」、「勧める」という指示に関係する語義の動詞は遂行動詞であり、これらは動詞の末尾がル形やマス形(日本語文法の時制でいう非過去<現在・未来>)なら、ロシア語では完了体動詞未来形ではなく、不完了体動詞現在形となることに注意する必要がある。下記に遂行動詞としての用法がある動詞の例を挙げるが、反復や、кончать(終える)のように過程や予定で使えるもの、лишать(奪う)のように評価解釈型動詞を兼ねるものもある。ただ、和文露訳では同じ不完了体動詞現在形であり、実用上は特に区別する必要もない。日本語にも遂行動詞はあるが、語義が

Posted by SATOH at 2020年01月31日 10:29
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