2020年01月31日

●第79回


日本語の時制は過去と非過去(現在、未来)が対立する。時制から見て日本語の動詞を状態動詞と動作動詞に分けると、状態動詞は、テイル形を取らずに現在の状態を表す動詞で、「いる、見える、思う」などであり、「今家にいる」、「明日もここにいる」のように、ル形で現在と未来を示す。動作動詞というのは、「話す、行く、歌う」などの動きを表す動詞で、ル形が未来の動作や現在の習慣的な事実を示し、現在の一時的動作はテイル形を用いて示す。
 一方アスペクト(出来事が進行中か、継続中か、終了したかなど動きの局面に注目する文法形式)で、日本語の動詞を分類すると、動作動詞(継続動詞とも言う)、変化動詞(瞬間動作動詞・結果動詞とも言う)に分かれる。動作動詞は「電話で話している」のように、テイル形が進行の状態を示している動詞で、変化動詞は、「イスに座っている」のように、テイル形で結果の状態(存続)を表す動詞である。テイル形には、このほかに「学校に通っている」などの反復・習慣を示す用法や、「棒の先がとがっている」というような形容詞的用法、「その話は一度聞いている」というような経験・経歴を示す用法があり、「~した」も「歩いた」や「歩いて来た」のように、日本語では過去と現在完了の意味がある。和文露訳の際には、これらをロシア語の時制やアスペクトなどに振り分ける必要が出て来る。
 しかし、こういう分け方だけでは、和文露訳には十分とは言えない。「(これから)~します」という文を露訳する場合、遂行動詞とそれ以外の動詞を区別しないと、どちらの体を、どの時制で使うのかが決められないのである。それは日本語文法のマス形が、非過去という現在か未来を示すからである。そのため遂行動詞には不完了体動詞現在形を用い、そうでない動詞は完了体動詞未来形を用いることになり、この二つを区別することが会話での和文露訳をする上で非常に重要である。遂行動詞というのは、「(これから)~をお知らせします」のように、今現在の発話の時点から動作が始まり、発話終了と同時にメッセージが聞き手に伝わる動詞である。その際、具体的な動作の内容を示す補語や状況語が文の構成要素(чтоを含む従属節も含めて)として存在するのが普通である。

(キャッチフレーズから分かるのは、これらのカップルは惚れあっていること、まだ結婚していないということである)По рекламным слоганам понимаем, что эти пары влюблены и ещё не женаты.
〔お前にも分かるように尋ねているんだ(尋ねている意味は分かるだろ、聞いてやるのはこれで最後だぞ)〕Я тебя русским языком (по-хорошему, последний раз) спрашиваю.

上述のように遂行動詞には新しい情報が含まれる。しかし、未来の時制の完了体の用法(4-2項)ところで詳述するが、新しい情報というのは完了体の管轄のはずである。ところが、遂行動詞はその動詞構文の中に、<~について、~ということ>というふうに、新しい情報(正確に言えば伝えるべき情報)を同時に従えているために、不完了体動詞現在形のままで用いられるという、体の用法から考えると、一見矛盾するような感じを受ける。しかし、動作の起点が現在であることと、従属する、その新しい情報(о + 名詞前置格かчто以下の節)に文の焦点があると考えれば、立派な不完了体の用法と言える。一方、遂行動詞ではない「(これから)食べます」という完了体動詞未来形は、一瞬後ないしは未来のいつかの時点が動作の起点になる。
遂行動詞というのは、例えば、(喫煙を禁止します)Я вам запрещаю курить.と医者が患者に言ったとすると、この発話の前は、喫煙は禁止されておらず、この発話をしたとたん、話し手(この場合は医者)にとって禁止命令が有効になるということである。日本語の辞書形(終止形)で、「命令する」、「気づく」のような動詞は遂行型であり、これらは言動一致型と呼んでもよいような動詞群であり、一人称で使われることが多く、現

Posted by SATOH at 2020年01月31日 10:14
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