2020年01月31日

●第74回

で扱われるからである。原求作先生は御著書の『ロシア文法の要点』(水声社)の中で、(この大学で私が働き出してから8年経った)Прошло восемь лет с тех пор, как я начал работать в этом университете.のначалも、しばしば脱落してработаюとなると書かれており、そうであれば経過を示す用法に不完了体動詞現在形を用いるのは、начатьの過去形という、一種の結果の存続(現存)の用法から発展したというふうにも考えられる。ただ不完了体動詞現在形の場合は、現在までの期間やいつからその期間が始まったかを示す状況語がないと、期間を限定しない規則的反復や、動作の一般化と区別ができなくなる可能性がある。期間を含意することから、この用法で使われるのは継続を意味する状態動詞であり、規則的反復の意味をも兼ねる動詞でもあるとも言える。

(劇作家として彼は1930年から働きだした)Как драматург он начал работать с 1930 г. <1930年が不動の始点となるため、完了体が用いられている>

一方、同じように過去から現在までの継続を示すことができる被動形動詞過去短語尾や完了体動詞過去形では、動作がいつから始まって現在に至るかを明示しようとする場合、с + 生格(例えば、с 1895 г.〔1895年から〕)のように起点を使う方法や、в + 前置格のように過去のある一点を示す状況語(в 1895 г.〔1895年に〕とか、два дня назад〔2日前〕など)を使う方法がある。起点がある以上、期間を示せないこともないが、結果の存続以外では、その期間を一つの点としてイメージすることが前提となり、心理的な負担になると考えられる。過去から現在までの期間を示す時には、不完了体動詞現在形の用法を用いる方が、不完了体が期間を扱うことから、その心理的負担が少ないという事なのだろう。この用法では過去から現在に至る規則的反復も示す事ができる。

(俺はもう30分も電話しているんだぞ)Я уже полчаса звоню. <ようやく電話に出た相手に対して、過去から現在に至る反復>
(僕はもう彼女と口をきいているよ。仲直りしたんだ)Я уже с ней разговариваю, мы помирились. <過去から現在に至る反復>
(私がモスクワ市民になったのは1848年からです)Я принадлежу Москве с 1848 года.
(当社はもう10年以上その市場でがんばっている)Наша компания уже более десяти лет работает на рынке.
(真夜中から工兵たちと一緒に働いている)С ночи работают вместе с сапёрами.
(その海は昔から貴重な魚種の漁場として有名である)Море издавна славится как район добычи ценных сортов рыбы.
(石油とガスの生産は1924年来そこで行われている)Добыча нефти и газа ведётся там с 1924 г.
(史書には赤の広場は15世紀から市の立つ広場として記載されている)В исторических документах Красная площадь как торговая упоминается с 15 в. <歴史的現在の2-8-8-7項にもупоминаетсяを使った文がある>(ルーシという民族の起源についての論争は、18世紀にミーレルとロマノーソフの間で始まり、現在に至るまで続いている)Дискуссия о происхождении народа «русь» началась в 18 в. между Г.Ф. Миллером и М.В. Ломоносовым и продолжается до сих пор.

 上の文の最初のначаласьは結果の存続ではなく、点過去であろう。しかし、下記の文は明らかに結果の存続で、過去から現在まで(あるいは発話の時点まで)の継続を示す珍しい例であり、この項の用法の起源とも言える表現方法である。

(10月から我々の状況に急激な変化が現れた)С октября наступила в

Posted by SATOH at 2020年01月31日 03:36
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