2020年01月31日

●第71回


3-1-1-4 ся動詞による非情の受け身と過程の用法

 不完了体ся動詞で受動態(受け身)を示すことができるものがあるが、主語に立つのは不活動体であり、人は一般的に主語にはならず、動作の主体は造格となる。このような受け身を日本語の文法では非情の受け身と呼ぶ。ただ動作の主体が明確であれば活動体が主語でも反復や過程の意味で用いられることがある。受け身の意味で使われる不定人称文は動作主が明確な場合には使えないからである。そのため非情の受け身は使い勝手が悪いが、被動形動詞過去短語尾の用法と違い、過程を示すことができる。9-4項も参照のこと。

(家が建てられている、家は建設中である)Дом строится.
(英雄たちは国家により表彰される)Герои награждаются государством. <主語は活動体だが、動作の主体が明確であるために不定人称文が使えない例である>
(大統領は1994年と1999年に再選された)Президент переизбирался дважды в 1994 и 1999 гг. <同上だが、この場合は動作主の国民が暗示されている>
(郡の医者は医療自治会によって追加料金で呼ばれた)Уездный врач приглашался земством медицины за дополнительную плату. <同上>

 この能動形動詞現在形や不完了体能動形動詞過去も、過程(それぞれ現在進行形と過去進行形)を示すものとして、形容詞的に用いることができる。

(建設中の都市で)в строящемся городе
Он спросил меня, кинув головою в сторону удалявшегося Милютина.(遠ざかってゆくミリューチンを頭で指し示して、彼は私に尋ねた)

 сяのついた動詞で不完了体が受動態で使われるものは、動詞によって反復・習慣、経過を示すから、被動形動詞過去短語尾との使い分けは簡単である。しかし自動詞としてсяのついた完了体の動詞と被動形動詞過去短語尾との語法の違いは、前者が動作主をイメージしない自発的用法(自然に~する)であり、後者は表面に出なくとも、動作主の存在が意識されるという点にある。

(心から重しが取れた)Тяжесть с души свалилась.
(ポプラが風で倒された)Тополь свалена ветром.

過程は同じく不定人称文でも表現できる。

(市では新しい学校〔が1校〕建てられているところだ)В городе строят новую школу.
(ドアにノックの音がする)В дверь стучат. <だれがノックしているか分からないという不定の意味で、動詞が複数形となっていると言える。10-3項の単数と複数参照>

3-1-1-5 その他の過程の用法

 過程の意味で「~中」はидтиを用いるが、на + 前置格でも同じ意味を出すことができる名詞もある。

(搭乗中)Идёт посадка.
(チェックイン中)Идёт регистрация.
(エレベーター修理中)Идёт ремонт лифта.

Posted by SATOH at 2020年01月31日 02:37
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