2020年01月29日

●第68回

が有ることには間違いないし、主観的ニュアンスもないので不完了体が来ていると考えられる。不完了体動詞現在形の予定の用法も、未来において予定通り動作が起こる(有る)わけだし、また主観的ニュアンスもないので不完了体が来るということになる。過程というのは現象の内容を示すわけで、動作や事実の有無の確認とは対立する。そういう意味では3-1-11項の様態の用法も過程の用法から派生したものである。

3-1-1-1 過程の意味

 動作の過程процесс действияというのは、ある時点での行為・動作が行われていて、終了していないという、いわゆる現在進行形「~する途中である、~しているところである」のことであり、不完了体動詞現在形で示す。過程の動詞は時間の経過のみならず、物理的ないしは心理的位置の移動を有限軌道ないしは無限軌道(円や楕円)で示す点が、時間の経過のみで位置の移動を含意しない状態動詞とは異なる。動作の起点ないしは終点を含意しており、終点が含意されていれば志向の動詞(7-1-1項参照)と重なる場合もあり、その点が起点も終点も含意しない状態動詞とは異なるとも言える。この用法は動作の有を含意するが、動作現象の内容を示すという点で、動作の有無の用法と対立する。その場での行為を示しており、不完了体が示す場依存型の用法の典型である。

(彼は駅へ歩いている)Он идёт на станцию. <有限軌道、志向>
(彼は池の周りを走っている)Он бежит вокруг пруда. <無限軌道>
(彼は死にかけている)Он умирает. <志向>

 この用法には7-1項の不完了体動詞の用法でもある志向(~を目指す)という、動作遂行には至らない用法も含まれるが、志向の用法は動作の目的を目指しての反復も含まれるものもあるという点が過程の用法とは異なる。

(食べ物のストックは尽きかけている)Запасы еды кончаются.
(何が起こっているのですか?)Что происходит?

ここでいう過程というのは上下などの動的なものであり、状態動詞(後述)の静的な用法とは異なる。目的志向的動作を示す動詞が過程の意味になりやすく、упорно(たゆまず)、настойчиво(粘り強く)というような副詞と結びつく動詞もそうである。動詞だけでなく時を示す状況語にも状態と動態の使い分けがあるので紹介しておく。

(毎日毎日暖かくなってゆく)С каждым днём становится теплее.

上の文でс каждым днёмとкаждый деньは日本語では同じく「毎日」だが、増減など動態的な変化があるときにはкаждый деньでなく、с каждым днёмを使う。露文解釈では「毎日」と訳せばそれで終わりだが、和文解釈の場合は状況語の語義だけではなく、用法をよく理解していないとロシア語には訳せない。同じような例文を挙げる。

(年を追うごとに彼は鼻もちならなくなっていく)С годами он становится невыносим!
(彼らの数は年を追うごとに減った)Их число с годами уменьшилось. <完了体が来ているのは動作をひとまとめと見なしているからで、一括化(2-2-1-5項参照)の用法と見なせる>

このほかに「ますます」всё + 形容詞や副詞の比較級・不完了体現在形の繰り返しも逓増・逓減の意味で使える。

Posted by SATOH at 2020年01月29日 20:35
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