2020年01月28日

●第42回

頭辞単純動詞(本源動詞)の不完了体はその傾向が強い。
 なぜ歴史的現在を普通の文にすると、完了体の過去形(用法的には点過去)に変わる場合が多いかというと、アネクドートの例でも分かるが、不完了体動詞過去形の特徴である事実(動作)の有無の確認ではなく、完了体の特徴である、過去の時間軸の特定かつ不動の一点(到達点)において新しい事態や情報が表れる事を物語っているからである。和文露訳では点過去であろうと、結果の存続であろうと、完了体動詞過去形には違いないからどちらでもいいが、露文解釈(和訳)では文脈によってこの違いをはっきりさせることが重要な場合も多い。
 直接話法でも過去を生き生きと想像するために、つまりは臨場感を出すために、saidの代わりにsay(s)を使うなど歴史的現在を使う事があるのは、同じ心理状態の所産だというようなことをイェスペルセン先生も『文法の原理』(安藤貞雄訳、岩波文庫、2006年)の中で書いている。この用法は形が似ている不完了体動詞現在形の予定の用法と共に、新聞の見出しにもよく使われる。日本語では体言止め(名詞止め)が多用されるのと対照的である。

(プーチン、オバマと会談)Путин встречается с Обамой. (= Путин встретился с Обамой.)

2-1-8-2 動作の順次性

(昨日は家に帰ってからね、夕食をとってね、仕事にとりかかったという具合さ)Прихожу я вчера домой, ужинаю и принимаюсь за работу.

 上の文を普通の文にすれば、下記のような完了体動詞過去形の点過去の順次的用法(2-2-1-4項参照)になる。

(昨日帰宅して、夕食を取り、仕事に取り掛かった)Вчера я пришёл домой, поужинал и принялся за работу.

歴史的現在では完了体動詞過去形が使えないので、不完了体がやむを得ず順次的用法という完了体の用法を担う事になったと考えられる。歴史的現在は過去の出来事を眼前に起こっているかのように生き生きと表現する用法なので、アネクドートで多用される。

(地下鉄の電車の機関士のところにテロリストが乱入し、手榴弾を取り出して、こう叫んだ。「すぐにコペンハーゲンに行け、さもないと吹っ飛ばすぞ」)
 機関士はこうアナウンスをしました。「ご注意ください。ドアが閉まります。次の停車駅はコペンハーゲンです」)
К машинисту поезда метро врывается террорист, достаёт гранат и кричит: «Срочно в Копенгаген! Иначе взорву!
Машинист объявляет:
- Осторожно! Дверь закрывается . Следующая станция Копенгаген!

 このアネクドートにおける、眼前にあるような生き生きとしたという歴史的現在の一番重要な特徴を取り去って、意味だけにするなら、これらの不完了体動詞現在形はзакрывается(予定の用法)を除き、すべて完了体動詞過去形ворвался, достал, крикнул, объявилで置き換えることができる。文脈によっては、歴史的現在が規則的な反復や状態、継続、経過を示す場合があり、置き換えるとすれば不完了体動詞過去形となる。

(冬。吹雪が通りを吹き抜け、凍てつく寒さが農家をミシミシさせたものだ)Зима, метель метёт по улице, мороз избы жмёт. <= Была зима, метель мела по улице, мороз избы жала.>

Posted by SATOH at 2020年01月28日 15:41
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