2020年01月28日
●第32回
Я не выключила плиту. <結果の存続の否定版とも、うっかり忘れたとも受け取れる>
Я не выключала плиту. <おそらくは意識的動作>
Я не взяла ключи. <結果の存続の否定版とも、うっかり忘れたとも受け取れる>
Я не брала ключи. <おそらくは意識的動作>
否定文というのは動作自体を否定するのだから不完了体が使われるのが普通である。つまり動作事実の有無の確認に不完了体が使われるということから、一般的に否定文こそ動作事実の無の確認(ゼロの反復)に他ならず、慣用的(一般的にこうであろうという)動作の否定には不完了体が用いられる。一方否定文に完了体を用いるというのは、具体的な1回の動作が否定される場合であり、結果の存続、否定の強調なども含め、何らかの主観的なニュアンスを付加することになる。簡単に言えば、動作自体がない(不完了体の否定)のか、この動作がないのか(完了体の否定)ということである。本項では過去の時制における否定を主に扱う。
不完了体過去形が扱う過去の時制における動作事実の無の確認の他に、動作が始まったが遂行していないか、成果の未達成(結果存続無効)は完了体過去形でも示せるし、否定の強調(一度も~ない)や不可能は完了体過去形で示す。つまり過去のある一点において動作が行われなかったという事をイメージすることにより、期待外れ、失望、予想が外れたことの驚き、不可能などの主観的ニュアンスが生まれる。そのため動作の主体を強調する(主体的意味を担う)場合、完了体動詞過去形が来る。これは否定文における点過去で、文脈によっては結果の存続の否定版である結果存続無効ということになる。また完了体が具体的1回の動作を扱うことから、具体的動作の否定も完了体の領域である。多回動詞の動作の否定については3-1-9項参照願う。また完了体動詞過去形の否定については2-2-2項を参照願う。
(どうしてスイカを売らなかったのですか?)Почему вы не продавали арбузы? <動作事実の無の確認で、その答えとしては、スイカをもって来なかったからなど>
(どうしてスイカを売り切らなかったのですか?)Почему вы не продали арбузы? <動作の未遂行で、その答えとしては熟れていないスイカが売れ残ったからなど>
(とうとうズィミナーさんはいらっしゃいませんでしたね)В конце концов г-жа (госпожа) Зимина не приехала. <成果の未達成、ずっと待っていたのに来なかったという期待外れという主観的ニュアンスがあり、これを不完了体動詞過去形に変えれば、Г-жа Зимина не приезжала. となり、動作事実の無の確認だから、来なかったという事実を単に表しているにすぎない。2-2-2項参照>
(ドゥヂーンツェフの慎重な演説は僕の記憶に残っていない)Осторожная речь Дудинцева не запомнилась мне. <結果の存続の否定版>
(私は何も言わなかったことにして下さい)Считайте, что я ничего не сказал. <具体的なその件については何も言わなかったということであり、ничего не говорилとすると「黙秘した」という感じで文脈上おかしい>
否定的ニュアンスのある動作には不完了体が使われることが多いと書くと、誤解の元かもしれない。否定的ニュアンスというのには二通りあり、一つは不必要や禁止を示すもので、動作自体が行われない、動作が存在しないという状態を示すものである。この場合の叙想語модальные слова(話し手の主観を示す)はне, нельзяなどの否定詞であるが、続く動詞は動作の開始も終了も意味しない動作そのもの(動作の内容)であるために不完