2020年01月28日
●第30回
日本語文法では、メッセージの中で話し手が一番伝えたい要素であり、音声的に実現したものをプロミネンスと呼ぶ。現実の会話では力点の強調やイントネーションによって、意識的に文の焦点を分かりやすくすることもできる。文の焦点が述語ではなく、特定の補語、状況語、疑問詞、主語にある場合は不完了体が使われる。このようにどこに文に焦点が来るのかは、主語、述語、補語と大まかに分けてのことである。つまりнужноのような叙想語модальные словаだけで考えるのではなく、例えばнужно + 不定形を一体の述語と考え、そこに来るかどうか、つまり、個々の単語に分けて考えるのではなく、刺身のつまのような用法であり、極端に言えば動詞がなくとも文意は伝わるような文で、時制の関係で動詞бытьの過去形 + 名詞だけでもいいような文では不完了体動詞過去形が使われる。これも動作事実の有無の確認の用法の一つである。
同じ動詞を繰り返す場合には、最初に完了体、次に不完了体が出てくる可能性が高い。これは最初に出てくる動詞は新しい情報を提示するという意味での完了体の用法であり、2度目の動詞の語義は既知であり、文にとって必要とされるのは、動詞の語義ではなく、動作の開始も終了も意味しない動作そのものであり、そのため反復のニュアンスがある代動詞として不完了体が用いられるのである。疑問詞との組み合わせでは疑問詞に文の焦点が来るので不完了体動詞過去形が使われることが多い。完了体動詞過去形が使われる例については2-2-6項を参照のこと。
(部屋を掃除したのは誰?)Кто убирал комнату?
(部屋の中はこんなに整頓されている。誰が掃除したか興味あるわ)В комнате так чисто. Интересно, кто убрал её? <結果の評価2-2-4項参照>
「彼に図面を見せたよ」- Я показал ему чертёж.
「いつ見せたんだ?」- Когда ты показывал?
「このバッグ買ったの」- Я купила эту сумочку.
「どこで買ったの?」 - Где ты её покупала?
上記の二つの会話における最初の文は、いずれも完了体動詞過去形の結果の存続(3-2-1項参照)の用法で、図面を見せているので彼は知っている、ないしはバッグが今手元にあることを示し、二つ目はКогдаやГдеに文の焦点があるため、不完了体動詞過去形が来ている。極端に言えば、このпоказывалやпокупалаがなくとも文意は通じる。このような動詞があってもなくともよいような場合、意味というよりは述語(代動詞)としての機能のみを動詞が担っている場合、不完了体動詞過去形が用いられる。
(その映画の出演者はニコライ・チェルカーソフ、アンドレイ・アブリコーソフ、ニコライ・オフロープコフ他だった)В фильме снимались: Николай Черкасов, Андрей Абрикосов, Николай Охлопков и другие.
上記の文の場合、重要なのは出演者の名前であって、動詞は刺身のつまのようなものだからで不完了体が来ている。映画というものは出演者が変わって何回か撮られることもあるからである。「映画(テレビ番組)の出演は~です」という場合は、このようにсниматься の過去形が用いられると覚えておこう。しかし、下記の文では舞台俳優であり、歌手であるヴィソーツキーが映画に出演したという事で、それを強調するために動詞自体に焦点があると考えられ、点過去(2-2-1項参照)の用法で完了体動詞過去形が来ている。
(ヴィソーツキーは26本の映画に出演した)Высоцкий снялся в 26 фильмах.
(〔映画は〕1968年モスフィルム社スタジオで撮影)(Фильм) Снят в 1968