2020年01月28日

●第27回

2-1 過去の時制における不完了体の用法

不完了体動詞過去形は仮定法を除き、過去の時制だけで用いられ、過去の事実を示す。これは不完了体動詞現在形が全部の動詞ではないにせよ、現在の時制以外にも、予定の用法では未来の時制に使われたり、また歴史的現在では過去の時制で使われたり、完了体動詞過去形が相対時制では未来の時制で用いられたり、完了体動詞未来形が例示的用法で過去の時制で使われるなどとは対照的である。そのため、結果存続無効などのように、現在とのつながりがないことを強調したい場合にも使われることになる。
また体の本質から言えば、不完了体は場依存型であり、完了体は場独立型であるというのは、当然、過去の時制にも当てはまる。それは動詞がその語義によって、場依存型になりやすいものと、場独立型になりやすいものがあるということを意味する。

2-1-1 過去の出来事や動作事実の有無の確認 → 不完了体動詞過去形

2-1-1-1 過去の時制における動作事実の有無の確認とは何か?

 動作や事実の有無の確認は、過去の出来事や動作をしたか、しなかったか、その動作があったか、なかったかだけを虚心坦懐に示す用法で、いかなる主観的(叙想的ともいう)ニュアンスもない。主語と動詞だけの文を除けば、文の焦点(意味上最も重要な部分)に来るのは動詞ではなく、ふつうは動作の主体、ないしは補語であり、そのため純粋に動作や状態のみを示すことになる不完了体動詞過去形が来るのである。
 動作事実の有無Было действие или не было.の確認というのは、動作自体を純粋に描写したものであり、理解しやすいのは、疑問文においてその動作事実の有無を確認するものである。

(「レーニンに関する報告はあったか?」「ありました」)Доклад о Ленине был? - Был.

ただ動詞の語義に内在する動作を強調する場合、例えば、後述のように結果の存続の意味であれば完了体動詞過去形が来ることになる。完了体動詞過去形を疑問や否定で用いれば結果の達成への期待(否定なら失望)という主観的ニュアンスが出る。この動作事実の有無の確認というのは、過去の動作や出来事が起こったのが、1回、ないしはそれ以上ではあるが、回数や、いつの時点で起こったという事をはっきりとイメージしないときであり、そのため不完了体動詞過去形が用いられる。動作が人の生命や損得(金銭)に関わるものなどは、場依存型では用いられず、動詞にも動作の焦点が来やすいため、場独立型として完了体動詞過去形を使う事になり、結果の存続で使われる場合も多い。

(だれも怪我していないか?)Никто не пострадал? <結果の存続>

厳密に言えば〔現在の時制〕の3-1-7項の経験「~したことがある、~したことがあった」の用法もこれに含まれる。この用法の不完了体動詞過去形は、過去を具体的に示す状況語(昨日、2001年、1年前など)とは相性が悪く、期間を示す場合のような、一見例外と思えるようなものはあるものの、共に使えないと考えてよい。それは具体的な時間を示す状況語は、動作に直結するゆえ、完了体との関係が深いと考えられ、動作に焦点が移るように感じられるからである。

(タクシーをお頼みになりましたか?)Вы заказывали такси?

Posted by SATOH at 2020年01月28日 11:39
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