2020年01月28日
●第20回
それが現在の時制なら不完了体を用いる。
というものであり、それ以外なら不完了体を用いると覚えておけばよい。体の用法の使い分けというのは、1回の具体的動作の終了(完了体)なのか、それ以外(不完了体)かということに尽きると思う。それ以外というのは状態、過程、性質、規則的反復である。問題なのはこの二つが複合したような用法があることであり、結果の存続のように、先に動作が起こり、それから状態が続くのであれば、動作は過去の時点で起こったわけであり完了体過去形を、評価解釈型動詞のように、動作の評価を伝えるものは不完了体現在形を、遂行動詞のように過程に初めと終わりがあれば不完了体現在形をという具合である。その場合は動作がいつの時点で起こるのかによって体の使い分けが決まる。例示的用法の場合は、これから(未来)の1回の具体的動作に例えて用いられると考えればよい。ただ問題は一つの動詞、例えば状態動詞(бытьも含めて)、動作のニュアンスがある場合もあることであり、形式上動作の意味であっても、状態で表現されるから始末が悪い。
(もういらしたのですね)Вы уже здесь. <結果の存続>
一つの動詞でも文脈によって語義が動作や状態(過程)となる場合があり、それは使われる動詞のイメージを頭の中におくことで、ある程度体の使い分けの問題は解決できると思う。
動詞によってそれぞれ語義が違うというのは当然のことながら、体の用法によりいくつかの動詞群(例えば本書の第7章)にも分けられるという事が言える。しかし、ここで問題なのは、日常よく使われる動詞について言えば、語義が一つではなくいくつかあり、それぞれ体の用法も違う場合もあり得るし、またいくつかのシノニム(同義語や類義語)の動詞は語義が同じでも体の用法が異なる可能性もあるということである。Я говорю...という一見現在の時制の文を例にとっても、文脈によっては、反復(反復)、過程、状態(能力)、遂行動詞、評価解釈型動詞、歴史的現在(過去の時制)という用法が考えられる。体の用法を本書では160ほど紹介しているが、体の使い分けというのは、一つの動詞にいくつかあるという意味では重層的であり、それが時制や法でも用法が分かれ、さらにいくつかの動詞群に分けられるという意味では平面的であり、これらが錯綜していると言えよう。それゆえ用法をそれぞれ切り離して、あたかも体の用法の原則が160とは言わないまでも、いくつかあるとして、それらを個別に覚えるよりは、なぜそのような個別の用法が生まれたのかその本質を会得し、それをこの160ほどの個別の用法に当てはめて、学習者が自分なりに検証した方が、有機的に体の使い分けをマスターできるようになると思う。
武道の稽古には自由組手と形組手がある。自由組手(フリー、乱取)というのは、実戦を想定した試合形式の稽古であり、形組手というのは、技の粋を形にまとめ、それを練習することによって実戦的な技を習得する手がかりにしようというものである。ロシア語の会話においては、実際にロシア人と会話をするのは自由組手であり、形組手は本書の目次にあるような各種の用法に相当する。これらの用法の説明を理解し、多くの用例に当たることで体の本質が必ず見えてくる。本書では、過去・現在・未来の三つの時制と命令法と不定法に分けて、またそれぞれを不完了体と完了体に分けて、多くの用例を体系的に方向づけ、配置することで、その手がかりとなるように工夫されている。これらの具体的な160ほどの用法を会得することにより、体の真髄がだんだんと自得できるようになってくる。
完了体の動詞は動作の完了を示し、不完了体はそれ以外という風に理解しているロシア語の学習者は非常に多い。「おかけください」をロシア語にすると、Садитесь!と不完了体動詞命令形が来ることに戸惑いを覚える人も多いはずである。なぜなら「おかけください」だって動作の完了(終了)