2020年01月28日

●第53回

動作に意識が集中する以上、動詞が文の焦点となっているので完了体が用いられる。逆に言えば、時間を示す状況語というのは、場独立型の場合が多く、つまり、新規の事柄として出てくる場合が多いので、場依存型の不完了体とは相性が悪いと言える。不完了体の場合は、動作を示す不動の一点の有無を問題にしないということになる。ただ状態動詞(3-1-6項)や過去の過程を示す動詞(2-1-4項)は、過去の一点、またはそれを含む動作を示す事ができるが、その過去の一点というのは、不動の一点ではなく、連続する動作の通過点であり、それが点過去との違いである。

「去年おばあちゃんに年賀状を出したかい?」- Ты посылал в прошлом году новогоднее поздравление бабушке?
「うん出した。今年も出したよ」- Да. посылал. И в этом году тоже послал.

 最初の文には時の状況語である「去年」があるのに、不完了体動詞過去形が来ていることに違和感を感じる人もいるだろう。最初の不完了体過去形посылалは動作の有の確認であり、動作が行われたかどうか分からない。このような不定の動作は時間軸の不動の一点が決められないので完了体は使えないということになる。しかも動作が1回とは限らないし、昨年1年間のいつかという風にも理解できるからなおさらである。二つ目の文の完了体動詞過去形послалは1回特定の時期に発送したという意味であり、点過去か、文脈によって結果の存続ということになる。
 もし和文露訳する際に時間を示す状況語がなければ、点過去は、不完了体動詞過去形の動作事実の有無の確認の用法との区別が非常に難しい。それは話し手の意識の問題だからだ。逆に言えば、意味が形式を決定するのだから、露訳するときに、意識の中に過去の明確な不動の一点において動作が行われたという認識があれば完了体動詞過去形を、そうでなければ、例えば期間などなら、不完了体動詞過去形を選ぶことにすればよい。不完了体の過去形の動作事実の有無の確認という用法では、過去に動作が行われたかどうかだけで、動作が行われた具体的な過去の不動の一点ということを問題にしない場合である。点過去の用法は動作事実の有無の確認の用例とともに十分比較検討して、用法の違いをマスターしてほしい。次のように動作の起点、ないしは起点から終わりまでも点過去で示すことができる。

(ローセフが来て以来状況が変わった)С приходом Лосева ситуация изменилась.
(東京において1875年からロシア宣教団付属の神学校が7年のプログラムで活動を開始した〔1919年まで存続〕)В Токио с 1875 г. при Руссской миссии начала действовать духовная семинария (просуществовала до 1919 г.) с программой, рассчитанной на семь лет.
(1817年からイェルモーロフは計画的にチェチニヤの奥地やダゲスタンに進軍を開始した)С 1817 г. Ермолов начал планомерное продвижение в глубь Чечни и Дагестан.
(1926年9月1日から1927年まで55,000円集めた)С 1 сентября 1926 г. по 1927 г. собрали 55 тысяч иен.
(1717年から1722年まで彫像をローマからペテルブルグに届ける船便が6回あった)С 1717 по 1722 год состоялось шесть корабельный рейсов, доставивших из Рима в Петербург статуи.
(1884年から1888年まで彼はおよそ350の作品を生みだした)С 1884 г. по 1888 г. он создал около 350 произведений.

 上の文は1817年から、1926年9月1日から、1717年から、1884年からという起点が明確であり、起点を過去のある一点ととらえることで点過去の使用を可能にしている。これは過去完了の継続の用法であり、見方を変えると、一種の動作の一括化(2-2-1-5項)と言えないこともない。

Posted by SATOH at 2020年01月28日 19:18
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