2020年01月28日
●第52回
しており、過去の時制においては、過去における具体的動作の唯一性、一回性の強調ということにもつながる。一般的には、いつということを明示しての、ないしは明示せずとも、心の中でイメージしての、初めての動作や出来事を示す時に使われる。そのため「初めて~した」というような特定の1回の動作や、「完全に」などという動作遂行を示す副詞вконец(まったく)、вполне(まったく)、вовсе(まったく)、окончательно(最終的に)、полностью(完全に)、почти(ほとんど)、слишком(あまりに)、совершенно(完全に)、совсем(完全に)には完了体動詞過去形が来ることが多い。
(まさにその瞬間、僕は階段を上って来るエスマンを見た)В этот же миг я увидел поднимающего по лестнице Эсмана.
(コンサートは完全に成功した)Концерт вполне удался.
(反乱は1825年12月14日ペテルブルグで起こった)Восстание произошло в Петербурге 14 декабря 1825 г.
(その小説は1862年最初に出版された)Роман впервые появился в печати в 1862 г.
(あるとき彼の身にきわめて興味深い出来事が起こった)С ним однажды случилось прелюбопытная история.
(彼らが初めてこの計器を設計〔開発〕した)Они впервые спроектировали (разработали) этот прибор. <впервыеがなければ、文脈によって、意識の中で過去の具体的なある時点をイメージしていれば点過去の用法だが、現在と関係づければ、できたばかりということで結果の存続になる>
この用法はとっつきにくいが、点過去である特徴の一つが、時間軸の不動の一点をイメージすることなので、状況の変化、出来事の場面転換を示すということがあり、この用法の完了体動詞過去形は「突然、すぐに、ついに」を意味するвдруг(突如)、неожиданно(不意に)、внезапно(突然)、сразу(すぐ)、сразу же(すぐに)、мгновенно(瞬間的に)、вмиг(一瞬)、немедленно(ただちに)、и вот(その結果ほら)、и тогда(そのときに)、и тут(その瞬間)、наконец(ついに)という状況語と共起する。しかし、これらの副詞は2-1-6項の動作の反復でも使われるので要注意である。また「すぐに」という状況語は命令法では、新規の動作ではない、回りの状況に合わせるような動作の場合、切迫感という用法で不完了体命令法と共に使われることもある。
(突然ドアが開いた。ドアのところに立っていたのはヂーマ・モーエフだった)Вдруг открылась дверь: в дверях стоял Дима Моев.
被動形動詞過去短語尾でも点過去を表現できる。
(1939年ド-マクはノーベル賞を受賞した)В 1939 году Домагку была присуждена Нобелевская премия.
具体的な過去の不動の一点を示す時の状況語(昨日、1980年、1週間前など)があれば、完了体動詞過去形を使えばよいし、そういう状況語がなくとも、動作や出来事が過去のはっきりとしたある一点で、遂行されたとかあったと話し手が意識すれば完了体動詞過去形を使う。不動の一点というのは昨日を例に取ると、昨日の3時とか4時とか、あるいは時間は忘れたが特定の瞬間であり、昨日中ということではない。昨日中であれば期間なので不完了体動詞過去形を使うことになる。
(彼はモルモットの犬から膵臓を切除した。これは1899年の暑い夏のことだった)Он удалил у подопытной собаки поджелудочную железу. Это происходило жарким летом 1899 года. <происходилоと不完了体過去形が来ているのは、みなし反復(2-1-6-1項参照)のため>