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掲示板、日記でおなじみのめるさんが、ロシア正教には欠かせないパースハ(イースター)について書いてくれました。めるさんならではの、パースハには欠かせないお菓子作り物語。最後にはレシピも載せてくれましたよ〜。お楽しみに!めるさん投稿です!
パスハのお菓子を作ってみました物語
by める

パスハとはイースター(復活祭)の事です

事の起こりは3月10日、マースレニッツアにブリヌイを焼いている時でした。
マースレニッツア(バター祭り)とはロシアの古代からの春を呼ぶ行事ですがキリスト教と合い混じり、大斎期に入る直前一週間の期間のことです。その間に藁人形を燃やして冬を追い出す祭りをしたりブリヌイ(ロシア風クレープ)を焼いてたんまり食べます。
厳しい大斎期に入る前にバターや卵をいっぱい食べて栄養をつけておこう、またブリヌイの丸い形は太陽を表し、長い冬が終わりこれからの恵みの季節に感謝するという話もあります。しかしほとんどの人は大斎の精進なんかしないのでこの時期は「ブリヌイを食べる時期」とアタマにインプットされている模様です。
ブリヌイをたくさん焼きながらそういえば今年はホームベーカリーがあるからこれでパスハのクリーチを焼いてみようかな〜?と思いました。
クリーチとはパスハに飾る円筒形でアタマが丸くなったマツタケのような形のケーキ・・というかパンというか・・その中間のような・・まあパネトーネですね。そんならベーカリーで焼けるし形もそれなりに出来るしいいんちゃう?ほんならもう一丁、その名も「パスハ」というカッテージチーズのピラミッドも作ってみよか、卵も染めてみよか、となり今年はパスハのお飾りをそれなりに一通りやってみようという事になったのです。

ロシア正教は旧暦(ユリウス暦)を使っているので毎年パスハの日がちがいます。
パスハに一番近い木曜日、「洗足木曜」はベリーキー・チトヴェルクまたはチースティ・ポストと言ってパスハの飾りを用意する日です。
今年のパスハは5月1日、ベリーキー・チトヴェルクは4月28日でしたからこの日は朝からバタバタと用意を始めました。
両親にも「今年は飾り菓子を手作りするから持ってくるね!」と宣言してしまったので2家分ですが、ま。なんとかなるでショ。
それではさっそく作ってみましょうか
まず用意するのはゆで卵と染め粉です。

この時期あちこちで染め粉が売っているので入手には困りません、2種類買ってみました。下の箱の方には染め粉以外に卵に貼るシールも入っていましたけどアニメっぽいカエルとかリスとか玉ねぎ教会とか「ダサい」ので使いません、もちろん使っていいんですよ、ダサくてもよければ。
пасхальное яйцо:パスハーリノエ ヤイツォ
パスハの卵です。

これこのようにぬるま湯で粉を溶かしてそこに3〜5分くらい漬けると染まります。染料を混ぜていろんな色を作る事が出来ます。

お次はпасха:パスハです。
これはトゥボロク(カッテージチーズですが日本のものより軟らかく味もソフト)にたっぷり粉砂糖とバターを入れて混ぜたものをピラミッド型に固めたお菓子です。
トゥボロクに入れるものはその他にナッツや卵やベリーのジュースや野菜やいろいろありますが一番プレーンなやつを作ります。
実はこのパスハ、うちのロシヤ人は見た事も食べた事もない、そんなものがあるのさえ知らないと言いました。両親に聞いてもなんせ良きソビエト人なので写真を見たことはあるけど材料も作り方も知らないし生まれてこのかた周りの誰かが作ったという話をきいたこともないと言いました。「そんなものをどうして日本人が作るのだ?」「おいしそうだからいんじゃない?」「そうだな」「そうそう」
パスハには専用の木型があり、それにトゥボロクを詰めて固めるのですがそんなものあろうはずもありません。
キッチンの棚をガサガサやってマルコメ君に活躍してもらう事にしました。
上の白いカップはスメタナが入っていたやつです。これこのように重ねてあとでジョイント成型しようと目論みました。
後ろに写っているのが私の先生、「ロシア正教会料理」というありがたーい御本です、この白いピラミッドがパスハです。
これが本物のパスハの木型です。
各部分は分解できるようになっています。

ちなみにこちらのお品は1800年代の終わりから1900年代始め頃のアンティークでお値段は300ドル。

そんなこんなしているうちにкуличи:クリーチが焼けました。ホームベーカリー様ってほんっと素敵。
砂糖が多いパンなのでいろいろ配合を変えて今日までに3回試し焼きして大体OKになりました。
マルコメ君たちにトゥボロクを詰め冷蔵庫で少し冷やして硬めにしますそのままだと緩すぎて成型しづらいのです。
「ところでバックの赤い色はいったい何でしょう?」

そんなこと聞くんですか?嫌な人ですね。
テーブルですよ、テーブルッ!
うちのテーブルは赤いんです。
テーブルだけじゃありませんよ、キッチン一揃い全部赤×白のツートンなんです(気絶)
ちなみに20年前の東ドイツ製。(参った)
パスハを型から抜きます。
ケーキサーバーとターナーを使って
ぐっぐっ、ペタペタ
ぐっぐっ、ペタペタとピラミッドに仕上げて行きます。
トゥボロクはぽろぽろしているのでなかなかスムーズにいきません。
なんとかピラミッドになったらコケモモやレーズン、カラフルシュガーで表面に模様をつけます。
木型には模様がすでに彫り込んでありますのでそれに従ってベリーなんかを置いていきますがマルコメ型なのでフリーハンド。
十字架とXBという最もオーソドックスな模様をつけました


XBというのはエックスビーとか巨大なベイビーのことではなくロシア語でХристос Воскресハリストス・ヴァスクレス(神はおわせ給えり)の頭文字です。
パスハの日にはこの言葉を言い合ってあいさつします。

もうちょっと固めるため冷蔵庫へ。
さて、クリーチのアタマに粉砂糖やアイシングを飾って全部が出来上がりました。

ネコヤナギもパスハに欠かせません。
パスハの一週間前はイエスがエルサレムに入城した時に群集が棕櫚の枝を振って歓迎した事を記念する「聖枝祭」ですがロシアに棕櫚はありません。この時期に芽がでているのはせいぜいネコヤナギくらいでしょう、というわけでネコヤナギになったというのがロシア正教典に書いてあるとかないとか(ないない)。
ネコヤナギはマースレニッツァの時期からその辺の道端でバアチャンが売っているのですが今年はパスハが遅かったためヤナギはほとんど花が咲いているか葉が出てしまっているのでヤナギ売りがぜんぜんいませんでした。それでオカーサンに無理を言って郊外の森まで車飛ばしてもらいGETしました。
家にあるものだけで何とか出来上がりました いかがでしょう
さて、両親の家の分と自分のウチの分と2セット作ったわけですがウチの分のクリーチをベーカリーから出してテーブルで冷ましていたところちょっと目を離した隙にアタマが食ってありましたこのお飾り菓子はパスハ当日まで食べてはいけないのです。・・・マツタケのかさがありません・・・当然ですが犯人はアレです。
「ゴォォォルァァァァァーーーー!クリーチ食ったなーーーー!!」
「え?クリーチなの?おいしいパンなーと思って食っチャッタ。ワタシの前に食べるものを出しておいたらダメデスヨ?」
そうでした・・・(脱力)
クリーチは出来上がるまでに3時間半くらいかかるので本当は洗足木曜の今日に作ってしまいたかったのですがあきらめてとりあえず両親のところへ一式を届けることにしました。両親は大喜び。「ニホンジンが作ったのか・・・」と感慨深げ。
パスハの前夜です。
敬虔な正教徒は教会のミサへへクリーチなどを持って行き、司祭の祝福をうけたりしますがウチではお飾り菓子を前にテレビでパッションなど見ておりました。
「これ何語?」
「ラテン語とアラム語」
「へー。」
「ところでパスハはどうしてピラミッドみたいな形なんやろ?」
「モーセがヘブライ人をエジプトから逃がした記念じゃないデスカ?」

違うと思います。

十字架を背負ってゴルゴダの丘に向かうイエス。そして落雷。
浦も外は雨です、時々雷もなって窓の外に稲妻が見えます。
「なんか映画とシンクロしてへんか〜?」
「パスハだからですヨ、何か不思議な力なんですヨ」
「あ、ほれほれ、あのイエスのアタマの上の罪状書きがロシア十字の上の棒やねんで」
「へー」
「そんで下の棒は足台や。なんで斜めかしっとん?」
「そんなことロシヤ人は知りませんヨ」
「ゴルゴダの丘で磔になった時ドロボウも2人磔になっとったやろ、イエスの言葉に一人は神を信じてもう一人は信じなかった。信じたドロボウちゃんは救われて上、信じなかったドロボウちゃんは地獄で下」(イエスの足の形という説もあります)
「・・・・・・・・・・」 ←疑いの目

映画パッションから
「・・・・・あっ!ホントダ、ドロボウの十字架も丘に立ってる」
「ほら、イエスがドロボウに説教してんやろ・・」

と、突然

うあ!停電!!!


「テレビ見れなくなっちゃいましたネエ・・・イエスが復活するの見タカッタのに・・」
「これじゃイエスは死んだままやな〜」
「ところで12時過ぎたからもうパスハですネエ、クリーチ食べてもイイデスカ?」
「イエスが復活できないからダメッ!」

「ええええええええーーーーーっっっっ???」イエス
翌朝、パスハ当日です。

朝一番でオカーサンから電話がかかってきました。
この日のあいさつは決まっています、
「Христос воскресе!」
ハリストス・ヴァスクレース(神はおわせ給えり)と言われたら
「Воистина воскресе! 」
 ヴァイスティーナ・ヴァスクレス(誠におわせ給えリ)と答えます。

このように卵のアタマをぶつけ合ってラッキーを占います。負けました・・・・
勝っても王様ゲームとは違いますので勘違いしないように。勝った人には幸運が来ます(たぶん)

やっとクリーチも切ってパスハも食べれます。

「よかったよかった。」
「誠にヨカッタ」 ←オッサン




おしまい。

    パスハをロシア語で検索するとこういうものがたんとヒットします。     ん?  パスハとは「イースター」 納得。

クリーチとパスハのレシピをご紹介しましょう。


クリーチはホームベーカリーの種類やイーストの違いもあるのであまり参考にならないかもしれませんが、
今回焼いたクリーチ(パネトーネ)のレシピをご紹介します。
ちなみに我が家のベーカリー様は12年前の韓国は「ゴールドスター」製。
ゴールドスター?今の「LG」です。
普通の食パンで粉は550ccと書いてありますのでそのへんから大体を見てください。
もちろんオーブンで本格的に中種で焼いたらずっとおいしいと思いますよ。

<クリーチ>
強力粉:300g
30〜40℃の牛乳:150g
柔らかくした無塩バター:75g
砂糖:30g
塩:4g
スキムミルク:17g
卵:1個
ドライイースト:7cc
レモン皮のすりおろし:小さじ1
ドライフルーツ:半カップ(レーズンと杏、パイナップルをラム酒とブランデー少々に漬けておく)
刻みナッツ:1/4カップ(胡桃とアーモンドを使用)
クローブとナツメグを少々


ナッツとフルーツ以外を全部パンケースに放り込んでスペシャルブレッドコースでスイッチオン!
ミックスコールが鳴ったらナッツとフルーツを入れます、
焼きに入る直前に表面にフルーツが出ないように(こげるから)手早く整えて戻します。
フルーツはミックスフルーツを使うと簡単ですが売ってなかったのでウチにあるものを入れました。
本当はレモンピールやオレンジピールをれるといいのですが。

焼きあがったらクールダウン前にさっさと出さないと表面が焼きすぎになってしまうので注意します。イマドキのベーカリーは上手に調整できるかもしれませんね。
冷めたらアタマに溶かしバターを塗って粉砂糖やアイシング、カラフルシュガーをふって飾ります。
もちろん何を飾ってもいいのですが作ってから中二日食べることが出来ないので悪くなりそうなものは避けます

<パスハ>
カッテージチーズ:800g
粉砂糖:160g(日本なら普通の砂糖でいいと思いますロシアだと結晶しているので溶けにくい)
無塩バター:150g

バターを室温でやわらかくして全部を混ぜてマルコメ型に入れ、冷蔵庫で少し冷やし取り出して成型、飾りつけするだけです。
帝政ロシア時代は寒かったのでパスハまでそのまま窓の近くでも置いておけばよかったでしょうが今は暖房がバリバリなのでひとしきり眺めたら冷蔵庫で保存します。
あ、型はマルコメでなくても可。

それではプリヤートノヴァアペティータ!!(おいしく召し上がれ!     めるでした!

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