2002.1.23KY

特集:ロシアお正月番組裏事情

石之介さん投稿記事
 
ロシアは、お正月こそ最も騒がしく盛大なお祭りであることに疑いの余地はないが、さてその迎え方は様々。

正月前に行われた世論調査によると、モスクワ市民のうち、お正月を「寝て」迎えると答えた人は僅か4%。10%は「5時までは起きてる」、50%は「少なくとも5時までは」起きてるそうだ。

 ついでにもう一つ世論調査の結果を。
ニュースのスタジオにもツリーは欠かせない

 お正月にヨールカ(もみの木)は欠かせないが、意外にもモスクワ市民のうち本物のヨールカを飾るのはたったの26%。52%は作り物のツリーを飾り、10%はツリーなしでお正月を迎えるとのこと。10%はやや多いような気もするが、一歩外へ出ればツリーだらけだから、確かにツリーが恋しくなるということはなさそうだ。







 ところでお正月はテレビ界も騒がしい。兎に角、正月後はテレビの正月番組評で紙面が賑わうから、いい宣伝にもなる。ところが今年の正月番組は軒並評判が悪い。

 注目の的となるのは、全国ネットのORT(ОРТ),RTR(РТР),TVC(ТВЦ),NTV(НТВ),クリトゥーラ(КУЛЬТУРА), TV6(ТВ6)の6局。
12月31日11時50分頃、殆どの局ではあらゆる番組が中断され、大統領祝辞が流れる。その後クレムリンが映し出され、時計塔に三色旗がダブった瞬間、国歌が盛大に流れる

  ORTと RTR・TVCは伝統的な「アガ二ョーク」(灯火の意 スターや有名人を招いての正月番組)。アガニョークは全ての場合録画で、撮影は一週間程前に行われる。故に正月時には同じ人物があそこにもここにも出てるなんてことは、どこも同じ。

  6局には入らないが、ローカル放送の「マスコヴィア」は異彩を放った。その異彩とやら筆舌につくし難い。なんとマロース爺さん(ロシア版サンタクロース)が40分にもわたり、黙ったまま身じろぎもせず生中継で(!)ブラウン管を支配したのだ。某テレビ評論家は「作者以外誰一人理解できなかったジョーク」と評した。哀れなるはマロース爺さん。40分座りっぱなしだから、足は痺れる汗はかく。どうもジョークで済まされそうもない。

 NTVは早くから「今年は正月の視聴率競争には参加しない」と宣言。4月に旧経営陣が一掃され、視聴率はがた落ちした為、とても正月番組どころではないのが真相。ロシアテレビ史上で、正月番組を作成しなかったのはこれが始めて。結局NTVは終始映画を流し続けた。

 TV6の企画は度肝を抜いた。
 「ВЕНЕЦИЯ В МОСКВЕ」(ヴェニスinモスクワ)と題された企画は、大雑把に言えばこうなる。
  まず、ГОСТИННЫЙ ДВОР(グム百貨店やツム百貨店と並ぶモスクワ屈指の名店街)をヴェニスはサンマルコ広場をイメージして改装、水をひいてゴンドラを浮かべ、ヴェニスに居る気分でお正月を迎えようという企画。更に会場中央辺りにスケートリンクを設けた。特筆すべきは、このカーニバルを全て31日から1日にかけて生中継で放映した。正月番組生中継は初の試みである。

生中継は初めて

会場には一般客の他、多くの文化人が招待された。
場内の全員にコスチュームと仮面が配られた
こちらはイタリア大使館の方

リアルト橋をイメージした舞台 サンマルコ広場同様、
会場には鳩も放たれた

  カーニバルはイタリア音楽の演奏から始まり、豪華な舞台には次々と歌謡界のスター、奇術師やアクロバットが登場したが、テレビ評論家の中には、「あいにくとカーニバルをぶち壊したのはスター達だった」と評したのもいる。

 全体的に評論家の共感を得られなかった正月番組だが、その大きな要因は、毎年同じ顔ぶれで登場する歌手達。「ディレクター達は視聴者がそれほどまでにアーラ・プガチョーワやフィリップ・キルコーロフ(プガチョーワの夫で人気ポップ歌手)が恋しいと思っているのか?」と辛口の評価も。

 尚下記は12月31日から1月1日の各局視聴率(%)。
ORT RTR NTV TVC TV6
トータル 24 16 13 8 12
19:00 - 23:00 36 20 9 3 11
23:00 - 02:00 36 33 6 4 7
02:00 - 05:00 37 25 8 6 9

2002.1.23

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