2002.9.6HK
コンサートでの思い出
トミーさん投稿記事
7年の冬、僕はウクライナのあるオペラ劇場のピアノコンサートを見に行きました。このコンサートはウクライナを中心にその回りの国々から子供たちが集まり演奏するものなのです。
この子供たちは俗に言う天才児というやつで。非常にクオリティーの高い演奏技術を見せてくれました。このコンサートで僕が一番印象に残ったのはプログラムの最後でした。このプログラムはゲストとして今、ウクライナでも最も期待されているピアニストがオーケストラと競演するという内容です。ピアニストの名前はアレクサンドル・ロマノソフ、当時12歳です。彼は一人の男のこの手を借りて舞台に上がりました。彼は片方の足が動かないのです。少年が椅子にすわり、会場は静寂に包まれました。
静かに目を閉じ彼がグランドピアノを弾き始めました。ゆるやかなメロディーが流れ、会場に響き渡りました。後ろで演奏しているオーケストラはこの曲特有の明るさを強調させていました。ピアノを弾いている時の少年の顔は弾く前とは別人のようでした。あどけなさが消え、むしろ僕自身より大人びて見えました。曲が中盤にさしかかるとだんだんと複雑な旋律が交差していきます。
少年の手の動きが速くなり、緊張感のある音が生まれます。低音数が増え、いつしか流れるような旋律は無軌道に叩きつけられるような強烈な音に変わっていきました。
素人から見ればめちゃくちゃに弾いているような音の洪水なのです。正直な話、この瞬間、僕は感動で震えてしまいました。こんな体験は初めてでした。少年がピアノを弾き終えると一斉に拍手が沸き起こりました。僕も誠意を込めて少年に拍手を送りました。僕自身、誠意を込めて拍手を送るなんていうことは生まれてそのつでなかったが、このときだけは特別でした。
それ以来僕はクラシックに対する見方が変わりました。当時、僕はハードロックやコアなブルースぐらいしか聴いておらず、クラシックに対しては真面目に受け取らなかったのですが、このコンサートをきっかけに考えが一転しました。また僕がクラシック以外にもジャズ、フュージョンフラメンコ、カントリー、ラテン、ファンク・・・etc.を聴くようになったのもこれがきっかけとなりました。
このコンサートはいろいろな意味を含めて音楽的に大切なことを僕に教えてくれました。なによりもジャンルという固定観念ぬきの音楽に対する視野の重要性を知れたことを僕は感謝しています。みなさんも是非、いろんなジャンルの音楽を聞いてみてはいかがでしょうか。