2002.9.8HK

はっさく1号スズダリに行く〜後編〜

はっさく1号さん投稿記事
 

  一晩たって次の朝。ニーナはさすがに早起きで畑へ(といっても家の庭なのですぐそこ)仕事に出かけてしまい、ゆっくり起きた私たちは簡単に朝食をとった後早速スズダリめぐりに出かけました。スズダリの街は小さくて、全部を歩いて見て周ることができます。でもここでやっぱり乗ってみたいのが馬車!値段を訊いてみたらかなり安かったので、迷わず乗ることにしました。馬車はなかなか快適だったのですが、街自体が小さいだけに私たちがはしゃいでいる間に早くも一周してしまい、あっけなかったというのが正直な感想でしょうか。 

  古い教会をひとつひとつ巡っていると同じような観光客に何度も出会います。そう、ここスズダリはかなりの観光地なのです。なのですが、何故か昔のままの空気が残っているというか。地元の人々の生活は何一つ変わらずそこにあり続けている、といったかんじです。例えば私たち観光客が散歩している横で道端では地元の人が水浴びをしていたり、川辺でおばあさんが洗濯をしていたり、野原では誰かが馬に乗って走っていたり、おじいさんとおばあさんが手を繋いでデートしていたり。なんだかほっとする、絵本にでも出てきそうな光景に何度となく出会うことができるのです。観光客がいくら都会から訪れようと、地元の人々は自分たちの生活を変わりなく送り続けているのでしょう。実は前から憧れていたんです。「黄金の輪」って名前からして素敵な響きで、「きっといい所に違いない」って。そして行ってみるとそこはやっぱりきれいで素敵な街で。田舎なので勿論暮らすには不便な事もあるのでしょうが(お湯の件然り)、「また来たいな」と思わせる魅力が確かにありました。

  魅力といえば教会もそのひとつで、これまでいろんな教会を訪れましたがいくつも教会を回るうちにあの独特のひんやりとした空気、ほんのりかび臭い不思議なにおいがなんとなく好きになってしまいました。その上聖歌隊のコーラスがたまたま流れていたりなんかしたらもう最高☆外観は地味なのに中に入るとびっくりする位豪華で綺麗な教会もありますよね。つくづく宗教の力って凄いんだなあと感じさせられます。

  さて。そうしてお昼すぎには全部周り終わりさらに再びおみやげも買い、かなり満足した私たちは午後のバスで帰ることにしました。(何泊するかもはっきり決めていない、本当に無計画な旅だったのです^^;)ニーナに別れを告げると彼女は何やら小箱を取り出し、私たちみんなにソ連時代のコインを一掴みづつ持たせてくれました。それから昔のアルバムを見せてくれたりしたのですが、彼女は実はドイツに留学していたこともある才女で、歴史を専門的に勉強したとの事。それから今は亡き彼女の旦那さんも若かりし頃は立派な軍人だったらしく、部屋には沢山の勲章が残されていました。もっといろんな話を聞いてみたい気もしましたが帰りのバスも心配だったので、最後に写真を撮ってお別れ。「冬にまた絶対来なさい。スズダリの冬は本当に美しいのよ。」と連絡先を書いてくれました。

  ニ―ナの家から駅まで私たちはタクシーで行ったのですが、なんとほんの2,3分で着いてしまったのです。どうやら相当遠いと思い込んでいた駅から中心部までが、実は目と鼻の先だった様で。私たちはかなりの遠回りをして、わざわざ野原を通って街までやって来たのでした(苦笑)。でもおかげで綺麗な景色も見られたし、冒険気分も味わえたしまあこんなこともある!という事であまり気にせず私たちはウラジーミル行きのバスに乗り、もと来た道を帰って行ったのでした。

  ウラジーミルからは帰りはバスが出ていて、すんなりそれで帰ることができました。途中一回どこかのドライブインらしき所に止まったのですが、なんとそこのトイレはドアが無く便器も「どう使うの???」という不思議な形をしていて、(写真撮れば良かった・・・)カーテンがついている個室もいくつかはあったものの、「これはロシア人でもかなり厳しいのでは・・・」という代物だったのです。(しかもそれで有料トイレ・・・!!)私は後にも先にもそれよりひどいトイレは見たことがないのですが、一緒にいた友人は以前これまた田舎の方に旅行した際に泊まったペンションのトイレがそんな感じだったらしく、その時は誰かが入っている時には紙を貼って合図にしていたとの事。実際入ったもののトイレを見て「無理」と判断して用も足さずに出て行ってしまったロシア人のお姉さんもいました(お金を出して入ったのに)。やっぱりドアがないのはロシア人にとっても厳しい様です。(当たり前か・・^^;)

  とまあいろいろありましたがこうして夕方にはモスクワに着き、メトロで家路へとついたのですが、地下鉄を待つ私たちの眼の前に、いかにもスキンヘッドグループといった感じの若者数人が突然現れて・・・しかもこっちをじっと見ているではないですか・・!そう5月初めといえば、まだヒトラーの誕生日が過ぎて間もない頃。外を歩くのにも気が抜けない状況だったのです。田舎から都会モスクワへ戻り、一気に眼を覚めさせられた思いがしました。すぐに気付いた私達は彼等から離れた車両へと移って乗ったのですが、2,3駅ほどで彼等は降りていったもののその時もやはりこっちを凝視して去って行き、はっきり言ってかなり怖かったです・・。ふう。

  ともかくこうして無事に寮へと戻ったわけですが、振り返ってみて思うのはやはり「無謀だった」・・・(^^;)。今回はいい人たちに出会えたから良かったけれどそれなりに苦労もしたし、やっぱりこれからはちゃんともう少し計画を立てて泊まる所も予約して行こうね、と誓った私たちなのでした。(でも無計画にのんびり旅行するのも結構楽しいと、私は思うのです。)その後の留学生活の中でも何度か旅行したりいろいろな所を訪れましたが、初めて行ったたった1泊2日のこのスズダリ旅行が、今でも私のなかでは一番鮮明に心に残っているのです。次はニ―ナの絶賛するスズダリの冬を見に行きたいなあと計画中。それから黄金の輪の他の街も行かなければ。(「勉強しろよ・・」ってかんじですね^^;)。皆さんもロシアに来たらぜひぜひ、田舎の方も周ってみて下さい。いろんな面からロシアを見るのもなかなか面白いですよ(^^)。


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