2001 11/6 ひよこ

「チェブラーシカ、日本を駆けめぐる」
МК(モスコフスキー・コムソモレツ)より

チェブです!

最近、チェブラーシカ騒動が日本をとらえた。チェブラーシカの映画を2つの映画館(東京と名古屋)が上映したことからすべては始まった。 一瞬にして1ヶ月先までの映画チケットがすべて売り切れ、さらにチケットの予約をするほど、小さな日本人達は、この大きな耳をもつ学問上種族の分からない小さな動物をとても気に入ったらしい。インターネットでは、Tシャツ、カップ、イラスト付きのバッヂなど、そこでしか買うことができない1000ものキャラクターグッズを発売する公式サイトまで登場した。日本人はチェブラーシカのことを、とても愛情を込めて「チェブ」と呼んでいる。



チェブラーシカのアニメ映画が、春まで日本都市の映画館で上映されている。春以降はビデオ発売が予定されている。またチェブラーシカの歌やゲーナの歌などのCD発売も計画されているようである。
このような急激なチェブラーシカ人気の秘密は、チェブラーシカは日本人が慣れ親しんでいるアニメとは全く違っているからだと、「チェブラーシカ」の制作者たちはみている。日本のアニメには概して誠実さと真心が欠けている。ハイテクノロジーは、「誠実さと真心」を「勇者は勝つ!」という単純な内容のない思想に置き換えてしまった。
この意味からすると多くのロシアアニメは西欧諸国アニメとは大きく異なっている。残念なことに、ロシアアニメ(ソ連アニメ)が世界の何処にもないほど質が高く、心を込めて作っているということに先に気がついたのは、外国人だ。ロシアのパトロン達(資金をだす人達)にとっては、このわかりきった真実がまだわからないようで、現在のロシアアニメ制作は危機に陥っている。


(中略)
エドゥアルド・ウスペンスキーの童話小説「わにのゲーナと仲間たち」には「読まなくてもいい前書き」という前書きがある。
「・・・動作がぎこちなく、毛のふかふかした変な名前を持つ動物『チェブラーシカ』。チェブラーシカはぬいぐるみ工場で作られました。チェブラーシカはなんという動物かと言うことができないほど、できあがりはよくありませんでした。彼は何者でしょう?ウサギ?犬?ネコ?果てはカンガルーだったりして?チェブラーシカの目はミミズクみたいに大きくて黄色くて、頭はまんまるでウサギみたい。しっぽは小熊みたいに短くてふわふわ・・・」。
この容姿をすばらしく見事に表現したのが画家のレオニード・シワルツマン。シワルツマンはチェブラーシカを本当の息子のように思っている。チェブラーシカをはじめとする、アニメ「チェブラーシカ」に出てくるすべての登場人物たちは、シワルツマンの長年にわたる探求と睡眠不足の日々の賜物なのだ。

シワルツマンさんの思い入れがあったから、チェブやゲーナは生まれたのです。

レオニード・シワルツマンは半世紀以上の間、たくさんのアニメを制作してきた。シワルツマンは「深紅の花」(1952年)、「黄金のアンチロープ」(1954年)、「雪の女王」(1957年)などの制作者の一人だ。
これら3つの長編セルアニメは今日まで生き続けている。これらセルアニメに登場するキャラクターたちは、まるで人間が演じている劇映画を見ていると感じさせるほど生きた性格を持っている。「ロシアアニメは、とてもたくさん(のアイデアなどを)ウォルト・ディズニーから借用したり、持ってきたりしている。」とシワルツマンは認める。ディズニーの「白雪姫」や「バンビ」はロシアアニメ制作者の一種のバイブルだった。


ロシアのTVが(西欧アニメを)買い付けて放送している今日の現状では、アニメは廉価な副業になっている。私たちが「テレタビーズ」を見ている間にも、世界では質の高いアニメ映画製作への、よりいっそうの興味が注がれている。例えばアメリカでは、元ソ連人のオレグ・ヴィドーフが、ソ連時代のアニメ映画の復興のために巨額の投資をした。彼についてのよくない噂にも関わらず、オレグは素晴らしいことをしたのだ。オレグは以前アニメで使われていた音楽と似せた新たな音楽を作り、セリフの録音にはハリウッドのスターたちを招いた。オレグはとてもデリケートに、ロシアアニメをアメリカ人の感受性に合わせ、より受け入れやすいような、よりダイナミックなものに仕上げた。なぜなら、アメリカの観衆はロシア的なテンポやリズムに慣れていないからだ。加工された後の「深紅の花」や「雪の女王」は、原型のコピーよりもよくなったとアニメ監督のフョードル・ヒトルーク(監督作品「ビーニー・プー(くまのプーさん)」・「ある犯罪者の話」など)とユーリー・ノルシュテイン(監督作品「霧に包まれたハリネズミ」・「話の話」など)は認めている。


海の向こうで、巨額を切り回しながらの大事業を行っているとき、レオニード・シワルツマンはアニメ映画「ドラ・ドラ・パミドーラ」という小さな仕事をしている。映画のあらましはもう出来上がっているものの、このアニメ映画が存続するかどうかは、官庁で行われている鑑定委員会の採決に因るのだ。この委員会の主なメンバーは自らが自分の映画を作りたいと夢見ている監督達。

チェブラーシカのようなアニメキャラクターは絵本だけになっていくの?
心温まるアニメ制作を期待したいところです。

画家のアニメーター達は、映画に居所を見出せず、書籍出版の方に向かっている。チェブラーシカ、わにのゲーナ、ヘビのウダーフやオウムのパプガイ(「38オウム」のキャラクター達)は、ゆっくりとアニメ映画から絵本の1ページへと住まいを移しだした。

シワルツマンは、先日、彼が描いた主人公達の姿を使った本の出版の契約を結んだ。画家自身はその事で傷ついてはいない。彼の信念は、「魂を込めれば、応えは返っては来る」なのだ。

オリガ・ニコラエヴァ
(10/27 МК(モスコフスキー・コムソモレツ)より

(読まなくてももいい、ひよこの感想)
ソ連時代にはたくさん制作されていたという、ソ連アニメ。ロシアになってからは、資金面の問題でめっきり制作本数が減っていると言うことです。世界的に有名なかのユーリー・ノルシュテイン監督でさえ、資金繰りに困っていると言うこと。新聞記事によると、シワルツマンさんのような巨匠といわれるアニメーターでさえ、アニメの仕事ができない状況。これがロシアアニメ界の現状なんですね。
でも、最近では、ペトロフ監督、バルディン監督など外国からの支援を受けてアニメーションを制作しているアニメ監督もいるようです。ペトロフ監督の「老人と海」は日本でも公開されその芸術的美しさが人気だったのではないでしょうか。バルディン監督もここ数年、ヨーロッパからの支援を受けて「アダージオ」や「チュッチャ」、「長靴をはいたネコ」など素晴らしい作品を制作しています。
現状に負けないで、素晴らしいセンスをもつロシアアニメの巨匠達に素敵なアニメ作品をたくさん作って欲しいものです。

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