はぐれミーシャ純情派

タシケント激闘編7日目中編
7月28日
 ラリサ叔母さんは知り合いとレストランに行くのだといって、7時過ぎに出かけていった。俺はアレーシアのため晩ご飯を作ってやった。ここまでは普通の夜と何ら変わりはない。しかし、そのあと・・・。
 11時をすぎてもラリサ叔母さんは帰ってこない.ラリサ叔母さんが鍵を持って出たのかわからなかったので、一応待っていようかと思ったが、今日は疲れたので先に寝ることにする。アレーシアはもう寝ている。歯を磨く。すると、ドアのチャイムがなった。ドアを開けるとラリサ叔母さんが立っていた。相当酔っている。ラリサ叔母さんは「ミーシャ、ビール飲みたい?」普段だったら、二つ返事でOKだが、今日はちょっと疲れているからなあ。でも、少しくらいならと思って「飲みたい」と答えた。「じつは連れがいるんだけど」とラリサ叔母さん。誰だよ。そこに現れたのは身体がごついはげの男。真ん中は見事につるつるで、両脇の残った髪はちぢれている。お腹が出ている。目つきが怖い。こんな役者いたな。こちらが挨拶しようと思ったのに、はげ男は無視。彼の目的は一目瞭然。ラリサ叔母さんだ。予想してなかった邪魔者(おれ)が現れたせいで機嫌が悪いらしい。
 三人で食卓につく。彼らはかなり飲んだらしく、ビールはもういいという。俺が一人でバルチカを飲んでいた。その間の二人の会話がまあすごい。俺のことなんかそっちのけ。ラリサ叔母さんは完全に周りが見えてない。ぐちゃぐちゃわけのわかんないことを言っている。俺のために乾杯するといって、俺のことを褒めちぎり出した。「もしタシケント以外のところに行っても二・三年経ったら絶対戻ってきて。そのときはアレーシアをミーシャのところに嫁にやるから。」おいおい、俺に選ぶ権利はないのか?こんな話しが延々と続く。当然、その男は無関心。ラリサ叔母さんは俺のことを本当の家族だと言って、とうとう泣き出してしまった。ラリサ叔母さん「わたしったら、泣いちゃったりして、赤ん坊みたい」すると、はげ男「女ってやつはいつまでたっても赤ん坊さ」だとさ。黙れ!その男は何とかして二人っきりのムード(俺を無視して)を盛り上げようとする。慰める振りをして触る触る。そして、何とか寝室に行こうとする。俺もいいかげん嫌になってきた。すぐ隣にあるベランダではアレーシアが寝てるのに。自分の母親のこんな姿を見たら悲しいだろうな。
 と思っていたら、とうとうアレーシアが起きてしまった。時はすでに夜中の12時半。まあ、これだけ騒いでいれば無理もない。アレーシアは彼らが買ってきたコンデンスミルクとパンを食べて黙っている。ラリサ叔母さんは踊りたいといってきかない。アレーシアに大声で「私の大好きなあのテープを持ってきなさい」と言いつける。その男はしらけきっている。アレーシアはそのテープを探したが見つけられなかった。音楽抜きでもラリサ叔母さんは踊っている。
 すると、またチャイムの音。もう1時だぜ。そこに現れたのはラリサ叔母さんの友達のナターシャとウズベク人のアリ。ナターシャはもうだいぶ酒が入っていた。ラリサ叔母さんの友達で歯が欠けたおばさんである。相変わらずうるさい。アリはにこにこしていてまあよさそうな人。でも、こんな時間に人の家に来るようなやつに良いやつがいるわけないか。彼らはスイカとウォッカを持ってきた。こうなるともうとめられない。アレーシアは「お母さんが時々友達を連れてくるけど、すごくいや」という。不憫でならない。二人で彼らを無視しようとするが、そううまくはいかない。ナターシャが絡んできて「ミーシャ、ベランダで一緒に飲みましょう」といってくる。断ったが、力ずくでつれて行かれた。そこにあったのはウズベキスタン産のウォッカ。味は最悪。アルコールを直接飲んでいるようだ。何とか振りきって逃げる。アレーシアに俺の部屋で寝るように勧めたが、眠くないという。まあ、こんなに騒がしくっちゃ、どこの部屋にいたって眠れないだろう。居間のソファーに座ってアレーシアと二人で全く違う話をする。テニスの話やモスクワの話。そして、一緒にジャッキー・チェンの映画を見た。ベランダでははげ男が切れて、「俺は帰るぜ」と言いだした。ナターシャとそりが合わなかったらしい。そのうえ、自分の本当の目的が果たせなかったこともあるのだろう。なだめたりすかしたりして、仲直りする。バカらしくってみてらんない。これが大人のすることか。自分の娘に見せて恥ずかしくないのか。

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