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〜ロシア生活を体感する写真レポート〜 今日のモスクワ |
2003年12月号
今は昔、言論統制がされていた時代、「今日のソ連邦」というロシア大使館発行の雑誌があり、ロシアを知るための貴重な情報源となっていました(すいません。実はバックナンバーを読んだだけで当時のことはよく知りません)。
「今日のモスクワ」では、今のモスクワで暮らす私たちの日常をビジュアルにお伝えします。
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ロシアの選挙活動?!(12/14 ひよこ)
投票を促すための選挙広告。 「これからの4年、私たちはどうなるのか?」 「なぜ、占う必要があるの? 自分で決めてください!」 |
みなさん、ご存じの通り、12月7日にロシア下院選挙とモスクワ市長選挙が行われました。
結果は予想通り。下院選は、プーチン大統領を絶対的に支持して、プーチン大統領からも指示(あれ漢字が違います?)されている統一ロシアの勝利。モスクワ市長選挙は、プーチン大統領と統一ロシアを支持するルシコフ現市長が圧勝で終わりました。
その他、下院選挙を通ったのは共産党を除いて、すべてプーチン大統領を支持する党ばかり。
極右派といわれるジリノフスキー党首のロシア自由民主党も、国会では「長いものには巻かれろ」状態。
リベラルな政党、SPSとヤブロコは5%の得票数を超えられず、下院の敷居をまたぐことができませんでした。
ということで、やっぱりプーチン大統領人気はまだまだ続くようですね〜。
選挙前にはだいたい必ず、経済界・政界の大物の汚職が突然明らかになったり、マスコミの情報操作が行われたりと、ロシアではいろいろなことが起こります。
↑圧勝した統一ロシアので〜っかい広告。 これナント!解体中のモスクワホテルの全面に つるされている垂れ幕です。スケール大きい! |
↑対するヤブロコは人海戦術を展開。 この小さな旗の下、2〜3人でチラシを配っていました。 やっぱり資金の差か? |
地下鉄の車内に貼られていた統一ロシアの広告。 職務や人を表す帽子ごとに一言添えられています。 左から。 軍隊:「守る」 非常事態省:「救う」 ルシコフ氏の帽子(?)または建築家:「建てる」 コーカサスまたはアジア地域を表す:「団結する」 |
ルシコフ市長の選挙チラシ。 みんなの支持ありって雰囲気ですねー。 |
対するレベヂェフ氏のチラシ。 腕相撲している相手は?あれルシコフ氏? (このチラシは駅で配られていたのですが、 ほとんどの人が見向きもせず通り過ぎてました。 かわいそう。) |
ロシぴろでは、結果が出ている選挙について、統括をしよう!なんて大それたことは思ってませんよ。
選挙前にロシアでよく報じられる汚職問題について語ろうというのでもありません。
そういう難しい政治の話しは、専門の方に任せておいて。ロシぴろではちょっと視点を変えて、選挙の様子を庶民の目から見つめてみたいと思います。
ロシアの選挙活動は、そう!すでに今年の夏頃から始まっていました。
どういう風に始まっていたかというと…。
「ビー。ビビー。」(玄関のベルの音。ウチのベルは旧式なのでうるさいです。)
ひよこ:「どなたですか?」
ドアの外の声:「公共部分の壁の塗り替えです。ドアを開けてください。」
ウチは、アパート玄関のドアのもう一つ向こう側に、お隣さんと一緒に鉄のドアを取り付けているため、その鉄ドアから部屋玄関までの間の狭い部分をペンキ塗りするというのです。
「開けないで。」と、気がついたらお隣の奥さんが、自分の家の玄関の陰からボソッと。
お隣の奥さんは、ドアの外の人に向かって「ここは充分きれいだから、塗り替えは必要ありません。」と言った後、
小声で私に向かって「ペンキのニオイがくさいものね〜。」といいました。
今年の春に生まれたばかりのミーシャがいるお隣では、子供の健康にもよくないと思ったのでしょう。
実際、ドアの中側のペンキはきれいなままだったので、「そうですよねー。」と私も奥さんに応えて家に入りました。
また、ある日。
「ビー。ビビビーー。」
ひよこ:「どなたですか?」
ドアの外の声:「配電メーターの交換です。ドアを開けてください。」 配電メーターも鉄のドアの内側にあるのです。
ひよこ:「え?あ。はい、はい。」。ガチャガチャ(ドアを開ける音)。
↑新しくなった配電機。 これでもきれいになったんですよ。 |
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次の日は、「何をしに来たのかなぁ。」 と思っていたら、雷シールを貼っていってくれました。 やさしいおじちゃんでしたよ。 (文章からは読み取れませんが) |
工事のおじちゃん:「ドア、開けたまんまにしといてね。まだやることあっから。それから2時間くらい電気が通りませんから。」
ひよこ:「(え!2時間も。でも、ここはロシアだから仕方がない。)終わったら、ベル鳴らして教えてくださいね。(鉄のドアの鍵も締めなくちゃいけないから)」
おじちゃん:「OK!」とか言って、そのままどっかに行ってしまいました。アパート中の配電メーターを交換するらしく、おじちゃんは駆け回っていたのです。
ふと、気がつくとお隣の奥さんがドアの陰から眠そうな表情で登場。
「ひよこさん、悪いわね。ミーシャも寝ているので、ベル鳴らして欲しくないのよね。」と一言。
「大丈夫だから、寝ててください。赤ちゃんが居て大変なんだから、奥さん休まないとダメですよ。」
といって、私も家に入りました。
数時間後。「ビー。ビ、ビー。」
ひよこ:「終わりました?」
工事のおじちゃん:「終わったよ。」
次の日
「ビー。ビ・ビ・ビーー。」
ひよこ:「どなたー?」
工事のおじちゃん:「ドア開けておいて。配電メーターをみなくちゃいけないから。」
ひよこ:「え゛?なに?」といってドアを開けたら、もう誰もいなくなっていました。
でも、とりあえず、そのままドアの鍵はかけずにしておくと数分経って、おじちゃんがやってきて何か作業を始めてました。
心配になって、顔を出してみると。鉄のドアを閉めようとするおじちゃんと目が合いました。
ひよこ:「ちゃんと動くんですか?」
工事のおじちゃん:「大丈夫だよ!心配しなくても、俺たちが万事うまくやったからね!」
その日の夜。いきなりの停電。しかも配電設備を全部取り替えた、この棟だけ。(おいおい。頼むよ。^^;)
と、ここまで読んでも、日本にいる皆さんは、一体どこが選挙と関係があるの?と思いますよね。
しか〜し、これが選挙活動の一環なのです!これぞ選挙のためのロシア式пиар(PR)なのです。
選挙前になると、やたらにアパートへの訪問客が増え、備品が整備され、家の回りの広場には子供のための遊具がふえ、道路は美しく整備され、…と、いろいろな面で公共物にお金が使われ出すのです。つまり、それまでの年月は、ほとんど使われていないんですよ。配電メーターなんて点検に来たことさえないんですから!
今回の壁の塗り替えも、配電設備の交換も、無料。一銭たりとも要求されませんでした。このロシアで信じられない!
こうやって、選挙が近づくまで、アパート整備のための訪問客は次々とやってきたのです。
「ビー。ビビー。郵便受けポストを新しくしました。新しい鍵を受け取ってください。」
「ビー。ビビー。ねずみ駆除の薬をまきます。明日の朝に行いますから、注意してください。」
「ビー。ビビー。じゃがいもはいらんかね〜。」←これは、選挙には関係ありませんね。たまに家まで売りに来る行商人です。(^^
←新しくなった郵便受け。 これは、とても嬉しかったです。 というのも、それまでの郵便受けは、何度も鍵が壊され 郵便物が盗まれるという事態だったからです。 |
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↑空き地には子供のための遊具がいっぱい!しかも新しい! |
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駅前も、なんだかきれいになっちゃって。花壇や噴水までできてます。 |
「そういえば、1999年の選挙の時。(今の家に引っ越す前の)家の近くの空き地にコンクリートが敷かれて、あっという間にバスケットボールのコートができあがったよなぁ。それに、ブランコとかシーソーとか子供の遊び道具が全部新品になったっけ。」
その当時、周りの変貌ぶりに私は驚きました。「モスクワは急に豊かになったのか。」と思ったのです。その時、私はモスクワに来たばかりだったから、その理由がわからなかったのです。
「まったく。選挙の前は、いつもこうなのよ。」とベルが鳴るたびに疲れた顔をのぞかせながら、隣の奥さんは言っていました。
その言葉を聞いて、私は「やっぱり!」と思いました。
やっぱり、これはロシア式選挙活動。しかも住民がきちんと気がつくように、行動を起こす(お金を使う)のは選挙の1年前くらい〜にする必要があるのです。
そして…。この住民の心を掴む選挙活動は、選挙結果にきっちり表れて…(?)
ま。いずれにしても、アパートの備品や公共物が新しく美しくなるというのは、いいことです!
できることなら選挙に関係なく、やってもらえればなぁ…とも思いますが。