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〜ロシア生活を体感する写真レポート〜 今日のモスクワ |
2002年12月号
今は昔、言論統制がされていた時代、「今日のソ連邦」というロシア大使館発行の雑誌があり、ロシアを知るための貴重な情報源となっていました(すいません。実はバックナンバーを読んだだけで当時のことはよく知りません)。
「今日のモスクワ」では、今のモスクワで暮らす私たちの日常をビジュアルにお伝えします。
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ハリウッド版「ソラリス」、ロシアに錦を飾る?(12/10 ひよこ)
日本でも、もう話題になっているでしょうか?
あのタルコフスキーの映画『惑星ソラリス』が、ハリウッドでリメイクされ、現在全米で公開中です。
このリメイク版、プロデューサーがジェイムス・キャメロン(『タイタニック』監督)、監督がスティーヴン・ソダーバーグ(映画『トラフィック』で、2001年アカデミー監督賞受賞)、主役がジョージ・クルーニー(『バットマン&ロビン』)という豪華なスタッフ。
ソダーバーグ監督のことは、このリメイク版『ソラリス』の事を調べるまで、よく知らなかったのですが、『セックスと嘘とビデオテープ』で監督デビューし、それでカンヌグランプリを史上最年少で受賞した人なんですね。今、ハリウッドでもっとも注目されている監督の一人なのだそうです。
しかし、この豪華スタッフにも関わらず、この映画、ロシアではあまり(というより、全く)好意的に受けとめられていません。
ロシぴろにいらっしゃっている方なら、もちろんご存知でしょう!
タルコフスキー監督は、ロシア映画界の伝説の人。その人が伝説そのものであり、監督の映画は片っ端から伝説になっていく・・・という巨匠中の巨匠。映画の世界だけではなく、タルコフスキー監督はインテリとしてロシアでは、もう特別な存在。文字通り『伝説の人』です。(まだるっこいこと書いてすいません。)
そのタルコフスキー監督が1972年に制作した『惑星ソラリス』。
ソ連時代の宇宙開発期に制作されたSF映画、しかも巨匠のタルコフスキーが監督したとなったら、宇宙好きで巨匠好きなロシア国民にとっては、『惑星ソラリス』は単なる映画と言うより、映画の聖典そのものみたいなもの(?)になっているのでしょう。(かなり大袈裟・・・かな。^^;;;)
「聖典のリメイク版っ〜とは、一体なんぞ!!!?」
という声が聞こえてきそうな記事が、コムソモリスカヤ・プラウダ紙にありました。
ハリウッド化されたタルコフスキーの構想は、絶望的で冒涜的でさえある。
20世紀FOX社は映画の展開をよくするためにお得意の芸当をやってのけた。
主役のジョージ・クルーニーが、背中ごしからのカットとはいえ、2回も裸で登場するのだ。このシーンのせいで、映画は18才以上でなくては観られない『R指定』にされた。その後、ソダーバーグ監督が抗議して、親の監視下なら13才まではクルーニーの裸は見てもいいという事になった。
初回の舞台挨拶でプロデューサーであるジェイムス・キャメロンは「タルコフスキーの『ソラリス』を観たのは、1972年にたった1回かぎりだ。」と語った。「それ以降、何回もスタニスラフ・レムの小説を読み返した。その後、小説映画化の権利を買ったんだ。」
2年前、キャメロンはソダーバーグに、何かSFものを撮ってみないかと話を持ちかけた。その当時(2001年)、監督賞でオスカーを獲得したソダーバーグ監督は、純粋なSF映画には興味がない・・・例えば、その背景に心理的ドラマがあったりすると・・・と答えた。その時、キャメロンは『ソラリス』の事を思い出したのだ。
監督するにあたり、タルコフスキーからの影響は?という質問に
「他の監督が撮った作品を、もう一度撮りなおすのは・・・あまり気分のすぐれることではない。」と、ソダーバーグは答えた。
ソダーバーグの『ソラリス』はタルコフスキーよりも75分短く、そこには、私たちがかつてタルコフスキーの『ソラリス』で見た緊迫する政治的な脈絡はない。未来宇宙に繰り広げられる話を背景に繊細なロマンチックなドラマの筋書きがハリウッドの巨匠によって新しくつけ加えられた。
もちろん、これは『タルコフスキー』ではない。しかし、このソダーバーグ監督もまた尊敬されている監督である。アメリカの批評家達は、この『ソラリス』をキューブリックの『2001年宇宙の旅』と並べて評価している。
「それで、どうやってこの映画を売っていくんだい?」撮影後、ジョージ・クルーニーが理にかなったことを言った。
上品に軽めに仕上げられた『ソラリス』といえども、やはりそこには解釈が要求されるのだ。それは、間近に迫っているクリスマスのことで頭がいっぱいの普通のアメリカの観客には、重苦しすぎる思考だ。
『ソラリス』は最初の5日間で、ランキング7位、やっと900万ドルを超えるという控えめなスタートを切った。
「セックスシーンで売るしかないかもな。」とクルーニーは語る。
アップで撮られた彼の毛むくじゃらのお尻が、せめて映画の資金面での破綻を救ってくれればいいが、とクルーニーは、ほのめす。
結局のところ、その道の通人にいわせると、クルーニーのお尻も捨てたものでもなく、なかなか見栄えするらしい。
・・・と、最初から最後まで映画の内容というより、ジョージ・クルーニーの体についての話で終わってしまった記事。
タルコフスキーを愛するロシア人は、かなり怒っている様子。。。です。
このソダーバーグの『ソラリス』がロシアで、日本で公開される時は、一体どんな風に受けとめられるのでしょうか。
タルコフスキーの『惑星ソラリス』とは全く異なる映画と思って、ジョージ・クルーニーのお尻・・・いやいや、ソダーバーグの『ソラリス』を観に行くと面白いかも知れませんね。
ハリウッド版『ソラリス』の公式サイトは、こちらです。 http://www.solaristhemovie.com/
モスクワに寒波吹き荒れ、死者も・・・。(12/3 ひよこ)
外気の寒さで歩調も足早に。 |
モスクワは、先週の金曜日(11/29)頃から急激な冷え込みに襲われました。木曜日までは+4℃ほどだったのに、金曜日には−15℃。日曜日の夜には−20℃まで気温が下がったとか・・・。
この急激な冷え込みのせいで、モスクワとモスクワ近郊では、犠牲者も出てしまいました。死者は39名にものぼりました。そのほとんどは、モスクワに溢れかえるホームレスの人たち。パトロールをしていた警官が、路上で死んでいる人を、日曜日だけで7人も見つけたそうです。他に、救急車で運ばれながら2人が死亡。
多くの人たちが犠牲に。 | 救急車の出動が絶えません。 | 病院にはたくさんの人が、 運び込まれています。 |
アルコール依存症の人たちも。 |
悲しいことに、この寒さの中、2ヶ月の赤ちゃんが路上で発見されました。赤ちゃんの健康状態はかなり深刻なようで、すぐに病院に入院させらました。
凍傷になったり、寒さで健康を害した人たち(ホームレスの人を含め)が、病院に運び込まれました。
「一番重要なことは、寒いところで、アルコールを飲まないこと。アルコールは体が温まると感じがちですが、実際には身体から体温を奪います。」とお医者さんは警告しています。
でも、多くのホームレスの人々まで、その警告は届かないようです。
急激な寒さは、身体も家の中の暖房もついていけません。
ウチは暖房が小さいので、家の中も結構さむざむ〜。オイルヒーターが1個あるのですが、2部屋は1個のオイルヒーターでは暖められません。
そこでgonzaさんは、大鍋に水を入れ簡易電気湯沸かしヒーターで水を湧かしながら部屋で暖を取ろうと考案。
下の写真を参考にご紹介しましょう。
大鍋に水を入れて、 | 大型の電気湯沸かし器登場! |
この湯沸かしヒーターで、 水を温めます。 |
電気を入れて、加湿器兼暖房機のできあがり! 暖まって、しかも乾燥も防げる優れもの?! |
gonza考案、加湿器兼暖房機『大鍋シリーズ“いい湯だな”』。 後ろのうす緑色した蛇腹状のものが、ウチの本物の小さな暖房機です。 |
さて、この加湿器兼暖房『大鍋シリーズ“いい湯だな”』は我が家の冷え込みを救ったのでしょうか???
結果 → 1000Wの強力な湯沸かし器で、部屋が湿気だらけになりました。それからブレーカーが燃えないか(!)心配です。(gonzaさん談) ・・・ブレーカーが燃えたのは、すでに経験済みです・・・^^;。
この湿気だらけの部屋で、さらに改良を目指すぞ!とgonzaさんは模索中です。(ほんまか?)
この寒さは、来週末まで続くと予報されています。
モスクワにいる皆さん、部屋をあたたか〜くして、あまり外にでないようにしましょう。
ボリショイ新劇場、柿落(こけらおとし)。(12/1 ひよこ)
これがボリショイの新らしい劇場 |
モスクワ・ボリショイ劇場向かって左隣に数年前から建設中だったボリショイ新劇場。
数年前から開幕は今か今かと待ち望まれていましたが、このたび11月29日、オペラ公演「スニェグーラチカ(雪娘)」が、こけらおとしされました。
カシヤーノフ首相が挨拶 |
ロシアにとってボリショイ劇場は他の劇場とは別格。劇場ファンにとっては待ち焦がれたボリショイ新劇場の開幕であり、一般人にとっても、ボリショイというだけでこれはニュースなのです!その証拠に、ボリショイこけらおとし公演にカシヤーノフ首相も訪問、
「ここが、若い芸術家たちの実験の場となり、彼らの創作アイデアや新しい試み実現の場になるでしょう。」と新劇場落成の挨拶をしました。
「スニェグーラチカ」のお話は、ロシア民話といっても差し支えないほどロシア人はみんな知っているお話でしょう。オペラの他にバレエも存在し、音楽はリムスキー・コルサコフ。まさにロシアを代表するボリショイ新劇場のこけらおとしには、もってこいのロシアオペラの演目です。
衣装も民族衣装っぽい、ロシアらしい演出になるのかと思いきや・・・。
カシヤーノフ首相の言葉通り、ボリショイ新劇場のこけらおとし公演であるオペラ「スニェグーラチカ」は、若手監督ドミトリー・ベローフが手がけたアバンギャルドな演出だったようです。
オペラ「スニェグーラチカ」の ドミトリー・ベローフ監督。 |
かなりいい男ですよねぇ。 役者よりハンサムかも。(^^) |
このベローフ監督、実は、モスクワにミュージカル旋風を吹き起こしたミュージカル「メトロ」や今モスクワで話題になっているミュージカル「ノートルダム・デ・パリ」にも舞台監督として参加している人。
古典的な意識にとらわれず、ロシアらしさというよりも、オペラの主題である「愛」に重点を置いているようです。衣装も日本の着物風なものだったり、SFっぽいものだったり(写真見てください)。
話題のミュージカル舞台を成功させた人だけに、古典オペラというよりも「ポップス音楽スターのコンサートを思い起こさせるようなアバンギャルドな演出」という意見も。
う〜む。すごい衣装だぁ。 | 見難いですが、衣装は着物風です。 |
ボリショイ新劇場は客席数は900席で、ボリショイ劇場の2500席と比べても小劇場と言えそうです。
何にしても、このボリショイ新劇場が若手芸術家たちの創作活動の場となり、ロシアでもっと多くの芸術家達が活躍するようになることを、ひよこは心から願うばかりです。