2003-7-23G


ロシア・ホームステイ手記
ラーメン中華

−第15回−

養子

A君の養子問題が持ち上がってから、僕はもうA君はうちに戻ってこないのではと思うようになりました。

A君がいない状況でのホームステイがこれから苦痛になっていくだろうと分かっていたので、彼に帰ってきてほしいという気持ちはありました。しかし、やっと自由になれた今のA君をまたここに引き戻すことは、とてもできないと思いました。しかし、うちのおばあちゃんはA君を渡す気持ちは全くなく、何が何でも彼をうちに連れ戻そうとしていました。

そんなある日、おばあちゃんが僕に一緒について来てほしいところがあると言いました。不安なのでどこかと聞くと、近くにある「後見人審議会」というところに行くとの答えでした。そこでは後見人としての資格があるかどうか審議され、もし資格がないと判断されればと、その権限を奪われてしまうのでした。同じ住まいに住んでいるとはいえ、赤の他人の自分がそこへ行くことに疑問を感じながらも、おばあちゃんと一緒に行きました。その途中おばあちゃんは「あたしの悪いことは言うんじゃないよ。」と念を押し、僕は「それでは意味がないのでは」と思いつつ2人無言でそこへと向かいました。

「後見人審議会」のある建物に着き、中に案内されると女性が1人いました。おばあちゃんと僕は身分証明書を求められ、A君との関係を聞かれました。僕はただの同居人としか言いようがないのでそう言うと、それを何かの書類に書き込んでいました。その後はほとんど僕は質問されず、おばあちゃんが家庭の状況など詳しく聞かれていました。おばあちゃんの答えは実際の状況と違うところが多々あったのですが、おばあちゃんの心情を察すると「それは違います。」と言えるはずもなく、僕は横でただ聞いていました。すると、その係りの女性が厳しい顔になり、こういうのでした。

「それらの話は実際とは違ってますね。実は、昨日あなたのお孫さんがやって来て、彼から全て聞きました。あのような状況では彼を責任を持って育てるのは難しいですね。彼自身もあなたのところで暮らすのはもう嫌だと言ってます。あなたを後見人として不適切であるとみなさずえません。」
おばあちゃんの体から力が抜けるのが分かりました。結局、後見人の権限は剥奪されてしまいました。家への帰り道、2人はまた無言で家に向かいました。

つづく。(予定)

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