2001年5月15日
ひよこ

ブラート・オクジャワの誕生日

皆さんご存知の通り、5月9日はロシアの戦勝記念日(День Победы)です。朝から胸にたくさんの勲章をつけたおじいさん、おばあさん達=第二次世界大戦の英雄達(Герои второй мировой войны)がソワソワして赤の広場に出掛けていく日です。赤の広場では朝9時から記念パレードが始まり、各テレビ局ではその模様が生中継され、国を挙げての盛大で厳粛な祝日(праздник)です。
あれだけつければきっと重たいだろうに、と思うほどたくさん勲章類をつけた英雄達は、この日ばかりは晴々とした顔をしています。本当に素晴らしい表情です。彼らはこの日、一気にみんなで若返るようです。パレードの後、彼ら英雄達は、ボリショイ劇場前広場やゴーリキー公園に行き、皆で語り合い、歌い合い、若者達は英雄達に花を贈るのが慣わしなのだそうです(そんな慣わしがあるなんて、私は知らなかったのですが)。彼ら英雄達のパワーがロシアの力のように私には感じられました。
・・・と、戦勝記念日がロシアにとって、国を挙げての祝日というのは周知のことですよね。
ここで書きたいのは、戦勝記念日の話ではないのです。
実は、この戦勝記念日の5/9が、ロシアの有名な詩人であり歌手Булат Окуджава(ブラート・オクジャワ)の誕生日だったのです。(知らなかったのは私だけだったかも知れませんが・・・)これを、私は5/9の朝、Эхо Москвы(モスクワのこだま)というラジオ放送で知りました。5/9は戦勝記念という方が、あまりにも印象強いため隠れてしまっていたという感があります。
恥ずかしながら、私はつい最近までオクジャワを知りませんでした。
ここで、オクジャワについて私の記憶の整理のために、少し記しておきます(といっても詳しくは私も知りません)。オクジャワは、今はロシアの文化とも言えるавторская песня(自作自演の歌、早い話がシンガーソングライター)の先駆者であり、彼の後にВладимир Высоцкий(ウラジーミル・ヴィソーツキィ)などのシンガーソングライターが生まれたと言われています。
オクジャワの歌は、少し悲しげであり少し皮肉を含んだ笑いをもたらし、彼のかすかに震えるよく通る声が、すばらしく合っている・・・何とも表現しがたい(歌を表現できるわけありませんが)歌です。オクジャワの声質のせいか、音楽のせいか、注意深く歌を聴いていると、かなり歌詞などを聞き取ることもできます。60年代、まさにロシアはオクジャワ漬けだったと言えるのだそうです。老若男女を問わず、すべての家で彼の歌が聴かれたのだそうです。彼の歌は、ロシアを思い起こさせる歌といえるでしょう。そのメロディの中にロシアを感じさせます。詩の内容は様々ですが、大別すると反戦、ロシア人の生活に因んだ歌、人生についてなど、(反戦を除いて?)ロシア人が好みそうな内容です。もちろん、ロシア人のみならず、その詩の簡潔にまとまった言葉の美しさとメロディは、各国で多くの人たちに愛されて続けています。
Молитва
Пока Земля ещё вертится, пока ещё ярок свет,
Господи, дай же ты каждому, чего у него нет:
умному дай голову, трусливому дай коня,
дай счастливому денег... И не забудь про меня.

Пока Земля ещё вертится -Господи, твоя власть! -
дай рвущемуся к власти навластвоваться власть,
дай передышку щедрому, хоть до исхода дня.
Каину дай раскаяние... И не забудь про меня.
祈り
地球がまだ回っているうちに、まだ日の光が明るいうちに
主よ、人々が持っていないものをそれぞれに与えたまえ
賢い人には頭を、臆病者には馬を与えたまえ
幸せ者には金を・・・そして私のこともお忘れなく

地球がまだ回っているうちに、主よ御心のままに!
権力を欲しがる者には権力を思う存分ふるわせ
気前のいい者にはせめて一日が終わるまで一休みさせ
カインには後悔させたまえ・・・そして私のこともお忘れなく

残念なことに、彼は1997年他界しました。でも、その歌は今後も多くの人たちに聴かれていくでしょう。様々な音で溢れている今日、5/9のオクジャワの誕生日に因んで、たまには静かにラジオから流れるオクジャワの歌を聴くのもいいかな、なんて思った日でした。

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