はぐれミーシャ純情派

タシケント激闘編6日目
7月27日
 できるだけ早くパスポートが欲しいところだが、今日は手に入れることが出来ない。その前にやるべきことをやってしまおう。問題は山積みである。
 まず、税関申告書の件。タシケントの空港についたときに、あるウズベク人の家族に税関手続きなどを手伝ってもらった。外国人は税関申告書を二枚記入しなければならない。しかし、俺はそのウズベク人にならって1枚しか記入しなかったのだ。彼らはウズベキスタンの人だから出国するときのための申告書は必要ないのだ。入国時に記入した税関申告書がないと罰金を請求されることがあると聞いている。なかには悪い税関職員もいて、数百ドル取られた例もあるというのだから恐ろしい。そのことに今日の明け方気づいて、そのあとは眠れなかった。10時になったらすぐに日本大使館に電話した。俺の名前いを言うと、電話を取った若いロシア人?女性が「○○大学で日本語の先生をしていらっしゃるミーシャ(もちろん仮名)さんですね」なんで俺のことを知ってるんだ?すぐ日本人の大使館員が電話に出た。事情を説明すると「まあ、別に問題にならないと思います。なくされる方が多いですが、そのことで空港でとラブラうになったという話は聞いたことがありません。罰金を払ったという例もきいてはいますが、スムで払うようなたいしたことない金額だったそうです。もう一度書きなおせば終わりでしょう。」とのこと。なーんだ、スムで済むのか。一応、領事の人に電話をつないでもらった。内容はほとんど同じ。最初は気づかなかったが、この人とは大使館でも会ってるし、電話でも話したことがあった。頼りにしてます。
 さて、その次はロシアのビザ。これがないことにはどうにもならん。何度かロシア大使館に電話をしたが誰も受話器を取らない。日本の観光案内書に書いてある電話番号でちゃんとつながった電話番号はほとんどない。大使館の番号が間違っているんだから恐ろしい。大使館に直接申請するのもたいへんだと思ったので、旅行会社に頼むことにする。旅行会社に電話をする。この会社には1度訪れたことがある。オフィスの雰囲気はアメリカやヨーロッパのいかにもオフィスといった感じ。みんなきびきび働いていたので好感を持った。電話をすると、担当のエレーナが説明してくれた。8月1日までに出発したいと告げると、今日中にオフィスにこいといわれた。写真三枚とパスポート。パスポートはコピーしか持っていなかったがそれでもいいという。
 すぐ家を出る。いつものショッピングセンターにスピード写真屋があるはずだ。ここ数年、タシケントではスピード写真を撮るところが急増しているのだという。この「写真」というのがくせものだった。エレーナが言うには。無光沢の写真でなければならないのだ。コンピュータの写真やてかてかしているのはだめなのだという。ショッピングセンターで撮れるのはてかてか写真のほうだった。とりあえず、旅行会社に一番近い駅のアミール・チムール・ヒヨボネ駅に行く。その辺を歩いてみるが写真屋が見当たらない。なんとか見つけた写真屋はてかてか写真しか撮れないところだった。そこのお兄ちゃんにどこで撮れるか聞いたら、スーパーマーケット「ミール」のなかの写真屋で撮れるという。簡単に道を教えてもらったが、どういもたどり着けない。いろんな人に道を聞きながらたどり着いた。やはりそこもダメだった。仕方がないので旅行会社に行くことにする。とにかく歩いた。暑い。たまらなく暑い。部屋探しの時の地獄を思い出した。
 旅行会社についたら、エレーナは電話中だった。明らかに仕事をサボっている。5分くらい待たされた後、すぐに手続きをはじめた。写真がないことを告げると、明日の午前中にロシア大使館に行くから明日の朝でもいいとのこと。ツムの近くに行けば写真屋が幾つかあるということで、エレーナは地図まで書いてくれた。いいひとだ。そのうえ、なかなか美人である。しかし、歯並びがちょっと悪い。お金は150ドルかかった。かなり高いが仕方がない。急いでやってもらうんだから。50ドルはロシア大使館に持っていく現金、100ドルは旅行会社に払うものでカード払いである。しかし、おれはカードを持っていない。そのことにエレーナはひどく驚いていた。「外国人のくせにカードを持っていないなんて」だってさ。悪かったな。カードの代わりに、銀行で払わなければならない。よくシステムがわからないが、振り込みのようなものである。招待状の手配も全部やってもらうとはいえ、100ドルはちょっと高い。
 旅行会社の運転手に銀行まで車で送ってもらう。2階の20号室で書類を渡すと、パスポートを出せといわれた。しかし、今はコピーしかない。そこのことを告げると受付のおばちゃんはパスポートをもってこいの一言と一緒に書類をつき返してきた。でも、今日払わないことにはビザが取れない。パスポートを大学に預けているという証明書を見せたらやっと納得してくれた。
 一階の支払所の前で待つ。すると二人の東洋人が支払い所のところに来た。男と女である。タシケントでは日本人によく似た人をよく見かける。韓国系の人がかなり多いのだ。だから、今回も韓国人だろうと思っていた。しかし、話をしているのを聞いていると、日本語のようだ。関西訛りがきつくて最初はわからなかった。すると、2階で俺のことを冷たくあしらったおばちゃんがやってきて、彼らに説明し始めた。ロシア語なんだから彼らにわかるわけがない。おばちゃんはさっきとは打って変わった笑顔で俺に助けをも求めてきた。彼らは昨日泊ったホテルの代金を振り込みに来たのだ。そこで換金しようと思ったのだが、聞いていたレートと違っているので「ノー、ノー」と繰り返していたらしい。彼らが聞いたというのは1ドル680スム。闇レートじゃねえか。銀行が闇レートで換金してくれるはずないのに。彼らはしぶしぶ公定レートで換金した。しばらく話をしたが、ちょっと変な人。二人ともすごく汚い格好をしている。話を聞いていると危なっかしくて仕方がない。かなりおきらくな旅をしている様子。これ以上関わらないほうがいいと思ったので、「さよなら」を言って、話を打ち切った。

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