Rev0213KY
ロシア・ホームステイ手記 |
ラーメン中華 |
−第8回−
祝日
ホームスティを続けていて、ロシア人家族と一緒に祝日を過ごすことが何度かありました。そこで“ロシア人”と“祝日”を強く結びつけているものがあることを知りました。それは、、、やっぱりウォッカです。 その時Sさんは入院中で家におらず、A君はクラスで遠足に行っていたので家には僕とおばあちゃんだけでした。 おばあちゃんはアルコールは基本的に飲まない人なのですが、祝日になると「お祝いだから」と言って、どこからともなくウォッカとグラスを持って来て、僕にすすめるのでした。そしてそれ以降、それが僕には恐怖となっていくのでした。 僕はアルコールに弱く、飲めない体質なので、ウォッカを飲むなんて自殺行為だとわかっていながらも、「まあ、つきあいで一杯はのまないといけないのかな」と思い、「これ一杯だけですよ。本当に。」と念を押し、半ばおばあちゃんの強い“押し”に負ける形で、グラスになみなみと注がれたウォッカを飲みました。 僕のグラスが空になるとおばあちゃんはすでに2杯目をつぐ体勢に入っていました。僕は「ヤバッ」と思い、グラスを取り上げ、「これ以上飲むと本当に死ぬから」と必死に説得を試みましたが、すでに酔っ払っているおばあちゃんは聴く耳を持たず、わけのわからぬ論理(「こんなろくでもないものをあたし一人に飲ませるんじゃないよ、あんたも手伝いな。」など)を押し通し、2杯目を強制するのでした。 それが3杯、4杯、5杯となり、それと共におばあちゃんが“バーバ・ヤガー”(スラブの昔話に登場する森に住む妖婆)に見えてきました。 限界をとうに超え、精神的にも肉体的にもあぶなくなり、死にそうな声でおばあちゃんに訴えると、「飲めないなら、早く言え。」と言われてしまいました。 「ウォーッ! 俺は何度も言ったぞーっ!!」と吠えそうになるのをこらえながら、おばあちゃんが用意してくれたベッドに横たわり、「さすがSさんの母親。無茶苦茶だ、イカス。」などと思っていると、おばあちゃんは僕の方を見てあわれそうに言うのでした。 「だから飲むなと言ったろ。」 「ウォーッ! 理不尽すぎるぜ。おばあちゃん!!」 僕はまた吠えそうになるのをこらえ、ベッドの上でウォッカ、そして祝日をうらむのでした。
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つづく。(予定) 写真:ひよこ |
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