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ロシア・ホームステイ手記
ラーメン中華

−第7回−

退院


 アルコール中毒患者が医療施設でどのような治療を受けているのか知りませんが、その成果という点でSさんが入院していた病院には疑問を抱いています。今回はその事について書こうと思います。

 Sさんが病院に連行されていったあの日をさかいに、僕らのクバルチーラの雰囲気は一変しました。A君は大嫌いなおじさんがいなくなったことで明るくなり、家にも頻繁に友達を呼ぶようになりました。おばあちゃんはしばらく複雑な気持ちでいたようですが、それでも悩みの種がひとつ消えたことで少し楽になったようでした。そして僕もこれで落ち着いた生活がおくれると思い、ホッとしていました。

 平凡ながらも平穏な生活が2ヶ月ほど続き、Sさんの事も忘れかけてきたある日のこと、ついにあの言葉がおばあちゃんの口から発せられたのでした。
「明日、Sが戻ってくる。」
僕はいきなり夢から現実へと引き戻された感じで、この予期していなかったおばあちゃんのひとことに狼狽えてしまい、その晩、今までのSさんの問題行動を思い出しているうちに、とても憂鬱な気分になりました。またあの生活が始まるのかと思うと、気が重く不安になりましたが、その一方で病院での治療を経て帰ってくるのだから、以前と同じ事はないだろう、もしかしたらこれからは一滴も飲まないかも、と少し期待をしていました。

 翌日、大学での授業を終え、家に帰る道すがら、Sさんに会ったらなんて挨拶すればいいのだろうとずっと考えていましたが、何も思いつかないままドアの前まで来てしまいました。Sさんはもう帰ってきているのだろうか、顔を合わせたら何を言えばいいのだろうと考えていると緊張してしまいましたが、意を決してドアを開けると、そこにはおばあちゃんの姿がありました。おばあちゃんは僕を見ると力のない声で言うのでした。
「Sは昼前に帰ってきて、また飲みだし、今は寝ている。」

 この言葉を聞いた瞬間、またあの生活が始まったのだと確信しました。
案の定、Sさんが起き出すと、またおばあちゃんとの口論が始まり、僕のSさんへの期待はもろくも崩れていくのでした。

 1ヶ月後、Sさんは以前と同様の過程を経て、また病院へと送られることになります。

ロシアのアルコール中毒は深刻です。
(つづく。予定)
写真:ひよこ
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