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ロシア・ホームステイ手記
ラーメン中華

−第5回−

招待


 クバルチーラに引っ越してまだまもなく、Sさんがアル中だという事も知らなかった時、一度友達をうちに招待した事がありました。そしてそれ以降、友達を招待するのは、ためらうようになってしまいました。Sさんが酔った時のことを考えると、友達を呼びづらいというのは確かにあるのですが、Sさんが病院にいる時でも、友達をうちに呼ぶことはありませんでした。おばあちゃんは呼んでもいいというのですが、そのおばあちゃんが問題なのです。


 唯一友達をうちに招待した時、このような事がありました。家にはおばあちゃん、Sさん、A君がいて、僕は友達を迎えるために出ていました。おばあちゃんは食事を用意してくれるといって、ボルシチや何やら作っていました。僕が友達と供に帰ってくると食事が出来ているからと台所に呼びました。

 台所で友達、A君、僕が食事をとりながら話していると、おばあちゃんが来て、友達をじろじろ見ながら、何か言いたげな顔をしているので、おばあちゃんを見ていると、おばあちゃんは友達にこう言いました。

「あんたはゲイ?」

 僕と友達はあっけにとられ、顔を見合わせてしまいました。続けておばあちゃんは言うのでした。

「あんたはいい顔立ちをしているけど、こういう顔は、精神病患者に多いんだよ。あたしは40年精神病院で働いていたからよく知っているんだ。麻薬とかは、やっていないか?」

 僕は「おいおい、突っ走っちゃってるよ、おばあちゃん。」と思いながら、友達の顔をちらっと見ると、彼も僕の顔を見て「訳分からない」といった表情をするのでした。

 食事を終え、部屋に戻り、友達と休んでいると、今度はSさんがやって来て、「ちょっと金借してくれないか?」と僕に言うのでした。「友達の前なのに、しょーがないな。」と思って、20ルーブル渡すと、ごきげんになり、変な英語を口ばさみながら出ていきました。

 気まずい沈黙の後、友達に「おばあちゃんの言ったことは気にしないで。」と言うと、彼は笑っていましたが、やっぱりちょっとムッとしているようでした。

 おばあちゃんはあんな事をいいながらも、友達の事を気に入ったようで、また彼を招待しなさいと言うんだけれど、今度は何を言い出すかと思うと、招待するのをためらってしまい、それ以降、僕のクバルチーラに友達が来ることはないのでした。
(つづく。予定)
写真:ひよこ
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