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ロシア・ホームステイ手記
ラーメン中華

−第12回−

真実


 A君の家出先に遊びに行って、A君と亡くなった父親の繋がりというようなものを感じました。

 A君には学者だった父親がいる。そのことをA君は誇りに思っている。それだけで十分なのではないか。そう思いました。


 翌日、うちのおばあちゃんに昨日のことについていろいろ聞かれました。
うちのおばあちゃんとしてはA君がむこうで元気にやっているかどうか、一番気にしていたので、その点に関しては全然心配ないと伝えました。
 むしろ、うちにいる時よりも生き生きしているとも言いたかったのですが、おばあちゃんの顔を見ると言えませんでした。また、むこうのおばあちゃんに迷惑かけていないかも心配していましたが、この2人のおばあちゃんの間には何かあるような気がしました。

 A君は以前からうちのおばあちゃんのまえで、うちのおばあちゃんとSおばあちゃんを比べて言うことがありました。そしてことごとくSおばあちゃんを立てるのでした。
このことがあってかもしれませんが、うちのおばあちゃんはSおばあちゃんに対して対抗心のようなものを持っているように感じました。
 そして今後、このA君の家出をきっかけに2人の間に決定的な溝ができてしまうのでした。


 話をA君の父親に移し、飾ってあった写真のこと、そして学者であったことを言うと、おばあちゃんは信じられないことを言うのでした。

「Aには自分の父親は学者だと言ってあるが、実際は学者なんかじゃないんだよ。」
「じゃあ、何だったんですか。」
「・・・マフィアだよ。」
「・・・。」


僕は言葉がありませんでした。さらにおばあちゃんは続けました。

「あたしの娘(A君の母親)はあいつのせいで殺されたんだ。あいつと知り合ってさえなければ・・・」


 僕は何と言ってよいのか分からず、「今日まさかこんなことを知ることになるなんて。」と心の中で思っていました。
 A君の抱く父親像と実際の父親とのギャップ、そしていつかA君が自分の父親についての真実を知ってしまう時のことなど考えると、複雑な気持ちになりました。

 また、これからA君と接するとき、A君に対し隠し事をすることになってしまう心苦しさ、それらが入り混じってなんともいえない重い気持ちになってしまいました。


 おばあちゃんはひたすらA君が帰ってくるのを待っています。しかしこの家出騒動、まだ2転3転す
るのでした。



つづく。(予定)

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