2014年を振りかえって
いつも「極東の窓」をご愛読いただき、ありがとうございます。今年もまた1年をふり返る時がやってきましたが、今回は特別な年でありました。1994年4月11日に開校した函館校は、20周年という節目を迎えることができました。
2014年の年明けはソチ五輪の熱気に沸きました。2月のロシアまつりは初めての冬開催、しかも冬を追い払うロシア伝統のおまつり「マースレニッツァ」と同時に行いました。ちょうどオリンピック開幕中でロシアに注目が集まったこともあり、初めてのお客様にも多くお越しいただき、賑わいました。
学生の間から生まれた「スーシキン」という、極東大函館校の公式キャラクターも誕生し、まつりで販売するために函館高専の学生さんの協力を得てキーホルダーを作成、好評を得ました。
今年初めての試みとしては、小学生を対象に自由研究に役立ててもらおうと「夏休みマトリョーシカ絵付け教室」を開催。函館市内だけでなく、本州からも参加者があり、3時間かけて白木のマトリョーシカに思い思いの色を塗りました。総合学習や修学旅行で来訪する小中学生も増えました。色鮮やかなロシアの民芸品に触れたり、民族衣装を着て記念撮影をしたり、初めて見るキリル文字で書かれた自分の名札を探し当てたり。キラキラと目を輝かせる子どもたちの表情がとても印象に残りました。こうした地域貢献や生涯学習といった面でも、もっともっと市民のみなさんに親しんでいただける極東大学になれば、と思います。
函館校の学生についていえば、日本たばこ産業株式会社(JT)の支援による「JT奨学金」が新設され、3名の学生が夏季休暇を利用してサンクトペテルブルクとモスクワにインターンシップ研修に出かけました。極東ウラジオストクには全学生が必修の留学実習で訪れますが、ヨーロッパロシアに出向く機会の少ない学生にとっては、現地の企業で卒業生がロシア語を生かして働く姿を見ることにより、目標を定めたり、就業意識を高めるとてもよい経験となりました。
また、9月末に行われた初代ロシア領事ヨシフ・ゴシケヴィッチ生誕200年を記念した一連の行事では、ゴシケヴィッチが現在のベラルーシ出身ということもあり、ロシアとベラルーシの両大使がそろって来函し、セレモニーが盛大に行われました。函館校の教員がどの場面でも通訳として働き、交流の一翼を担いました。その際、ベラルーシ国立大学で日本語を学ぶ学生6名も来日し、函館では極東大学の学生が市内観光や浴衣の着付けなど日本文化体験のお手伝いをしたほか、その後京都・東京と旅行を続ける中で、函館校の学生2名が通訳補助として同行するなど、日頃勉強したロシア語を試す機会が与えられました。
そのほか、社会人となった卒業生が休暇を利用して函館に戻り、オープンキャンパスのお手伝いをしてくれたり、在校生のために自身の就職体験を踏まえながら、今の時期に何を考え、何を身につけるべきか、在学中の過ごし方についてアドバイスをくれるなど、ありがたいこともありました。在校生にとっては身近な先輩から聞く体験談が何より参考になるようです。
ロシア語を学ぶだけではなく、それ以外のことにも視線を向け、知識を広げることの重要性。この学校では授業以外にも様々な行事や課外活動を通じることにより、それが可能です。学生がもっと積極性を持っていろいろなことに挑戦し、そこから吸収してくれることを願います。
そして開校20年の今年を締めくくる、12月20日に行われた記念行事。ソ連崩壊・新生ロシアの誕生という歴史の大きな節目にNHKモスクワ支局長として現地から日本へ情勢を伝え続けたジャーナリスト・小林和男氏をお招きして記念講演会を開催できたのは、大変光栄なことでした。その時代のロシアウォッチャーにとっては、小林さんはスターです。著作も面白く、始まる前に「小林さんに来ていただけるなんて、夢のようです!」、とお伝えしたら、「嬉しいなあ。それじゃあ、はりきって講演します」、とおっしゃいました。そのお言葉どおり、エネルギッシュで観客の心をつかんで離さない、笑いの絶えない講演会となり、約240名の来場者が口々に「おもしろかったね、よかったね」と言いながらお帰りになりました。
引き続き関係者にて行われた祝賀会には、函館校20周年と函館日ロ親善協会25周年を祝い、道内、本州、ウラジオストクからもゆかりの人々が駆けつけてくれました。同窓生、旧職員、日本人もロシア人も、どの顔も懐かしい顔、そして笑顔。私自身はここに勤めて15年目ですが、開校時の苦労は並大抵ではなかったでしょう。この20年の間には鬼籍に入った方も何人かおられます。様々な困難を乗り越えての今日であることを心から喜ばしく思うとともに、ここまで函館校を作り上げ、支えていただいた多くの方々にあらためて敬意を表したいと思います。
来年はまた笑顔で1年を締めくくることができるよう。みなさまどうぞよろしくお願いいたします。