択捉島民の生活状況(衣食住)
今年9月12日(月)から15日(木)の日程で、平成23年度第5回北方四島交流訪問(いわゆるビザなし交流)が行われました。訪問団の一員として、本校学生4名が選ばれ、択捉島を訪れました。
今回は、ロシア語科1年の赤羽真依子さんの、特に択捉島民の衣食住に関するレポートをお届けします。他の参加学生のレポートは、学報ミリオン・ズビョースト/百万の星 第69号に掲載されておりますので、こちらも併せてご覧ください。
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衣服に関して、日本とさしてかわらない印象だった。好みやセンスの違いくらいで貧しいとも裕福とも感じなかった。アディダスのTシャツやスニーカーをはいたおじさんもいた。見かけただけでも服屋のキオスクが2軒ほどあり、運転手さんに聞いたところ、自分はもうちょっと向こうの服屋で買っているとのことだったので、島内で調達できていると思われる。
食に関して、ホームビジット先の方の話では、物価がロシアより高いそうで、3倍ほど違うものもあるらしい。流氷などがあると店に欲しい物が何日もない状態が続くので、そんな時は店にある物で過ごすということだった。島ならではの苦労は、食料に関する事が一番大変なように感じた。
私が訪れた食料品店では、ジュースやお菓子、アイスクリーム、調味料、穀物、パスタなどの加工食品はロシアと変わらないものを売っており、どこも小さな店で品数は多くなかったが私の予想以上に充実していた。ただ、生野菜は傷みが激しく、本当にここで買っているのか、もしかしたら家庭菜園などでまかなっているのかなと思ったことと、肉、魚、乳製品が少なかったので生鮮食品に関しては少し不便かもしれないと思った。
また、択捉では民間と公的機関が共同で建てているとのことで、例えば緑色に塗られた部分は公的機関、水色の部分は民間、というように1つの家の外壁がそれぞれの部分で塗り分けられて二色になっていることがある。ただ色は決まっておらず、ホームビジット先の方もなぜその色かは解らないけれど、よく見るとただその色のペンキがあったからという理由ではないみたいと話していた。階ごとに塗り分けられたすごいものもあるらしく、家によって使われる色が違うのでとてもカラフルで楽しい町の景観を作り出しており、荒い島の自然から心和ませる工夫のようにも思えた。
携帯電話は、どれくらいの人が持っているかはわからなかったが、携帯で映像を見せてくれたおじさんは、タッチパネルでは無かったがかなり性能の良い新しい携帯をもっていた。ホームビジットの方もノート型パソコンやデジカメを持っており、どれも私たちの使っているものと変わらないように思った。島のインターネット状況や電化製品の店があるかどうかは確認し忘れてしまったのだが、電化製品が古い物しか無いという印象は全くなく、私たちの生活とかわらない印象だ。
ただ、もしかしたらそれらの買い物はロシアやサハリンなど、島外で入手している可能性が高いように思う。ホームビジット先の方も実家に帰った時に買い物をたくさんしちゃう、という話をしていた。島民は移住者が多く、その人たちにとってロシアへ帰る機会は多いだろうし、移住の際にも持ってきている可能性もある。島の中は不便でもロシアに帰れば物がそろうなら、島での生活で困る事もないだろう(私の函館での生活とかぶる……)。
また、仕事については漁業関係者が最も多いらしい。漁師やその加工工場、その製品の販売や経理など多岐にわたる。他には学校の先生や役所、消防署などの公的機関もある。
しかし、ギドロストロイの工場では夏の間の季節労働者がとても多く、特に大学生には良い仕事として多くの学生がやってくるとのことだった。ちなみに島民の4分の1がその工場(会社?)に勤めているそうだ。夏が忙しいとはいえ、仕事を季節労働者が担っていることに驚いた。訪問時は9月だったため既に学生はおらず、今年は獲れない年でもあるため閑散とした印象だった。
ちなみにホームビジット先のご夫婦は、以前モスクワに近い町に住んでいたらしい。奥さんは大学で経理を学び、それをいかせる仕事に就くため択捉島へ来たそうだ。旦那さんも島内の工場で法律関係の仕事をしている。択捉島へは極東地域の人が来ているのかと思っていたので、モスクワほど離れた町から来ている事にとても驚いた。ロシアは就職情報が遠くまで行き渡るらしいことも興味深いし、ロシア人にとってそんなにも離れた地域に移住することに抵抗感が強くないこともおもしろい。
択捉島民の生活についていえることは、おそらくロシア国内のロシア人の生活と変わらないだろうということ。不便さはあるが、物が極端に無い生活ではないし、島民だからという貧富の差も無いように見えた。住民はロシアから移住してきたのだから当然かもしれないが、衣食住などの生活状況はロシアと同じ、ただ不便で入手しにくさがある、という違いのみだと思われる。
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