大森巳喜生・訳「地下洞窟の子どもたち」
鹿児島県曽於市在住の大森巳喜生さんが、В.Г.コロレンコの短編小説「地下洞窟の子どもたち(ДЕТИ ПОДЗЕМЕЛЬЯ)」を翻訳し、自費出版しました。
この作品は1954年発刊のソ連中等学校第5年生用の読本教科書「国民文学」からの抜粋で、既に岩波文庫から「悪い仲間・マカールの夢(中村融・訳)」として出版されたものがあります。
大森さんは大学時代から独学でロシア語の勉強を続け、中学校の教員を定年退職後の2001年、函館校で2週間のプライベートレッスンを受けました。自身で選んだА.С.グリーンの「Алые парса(真紅の帆)」を購読するという授業を、イリイナ・タチヤーナ准教授と鳥飼やよい准教授が担当しました。大森さんは非常に熱意ある学生となり、2003年にも再び本校を訪れ、デルカーチ・フョードル講師の指導で「За даль земли(大地のはるか彼方に)」の和訳に取り組まれました。
その後も晴耕雨読の生活をしながら勉強を重ね、このたび晴れて「地下洞窟の子どもたち」出版の運びとなった訳です。この翻訳の際には同じ鹿児島県出身の鳥飼准教授が監修を務め、1年半に渡るFAXのやり取りの中で推敲を重ねました。また、挿絵は大森さんの娘さんが描くなど、大森さんの人柄が伺われる、温かみが感じられる本になっています。
大森さんは訳者あとがきの中で、「和訳本を上梓するのは不遜ではないか、と何度も考えたが、ロシア語を学んだ者としての意地・決意があった。合わせて等身大のロシア語学習歴の集大成を世に問うてみたいという願望が私を突き動かした」と述べています。
大森さんの夢の実現に私たちが関われたことを嬉しく思います。そして何より、勉強を続ける大森さんの根気強さと「地下洞窟の子どもたち」の完成に心から拍手を送りたいと思います。
(*現在はプライベートレッスンは受け付けておりません。)