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2007年11月27日

ハレの日にはピロークを食べよう!

 ピロークって知っていますか?ロシア風パイ、と呼ばれますが、層になったパイ生地ではなく、酵母で発酵させた生地を使って焼く、どちらかといえばパンに近い感じのものです。ちなみに日本でもおなじみのピロシキは語源的にはピロークの小さいもの、という意味、といえば何となくわかるでしょうか?
 
 中に入る具もピロシキと同じく様々あります。函館校ではパン屋さんに特注で焼いていただくのですが、いつもお願いするのはリンゴを煮たものや、鮭のほぐし身とキャベツ・玉ねぎを一緒に炒めたもの。リンゴはともかく鮭?と思うかもしれませんが、鮭は塩味がきいてお食事にもなるおいしいものです。
 具は特別贅沢なものではありませんが、ロシアでは昔、ピロークは祝祭の折に焼く、ハレの日のものだったそうです。函館校では、ロシアから来た留学生の修了式に登場します。学生や教職員、ホストファミリーなどが集まり、紅茶を飲み、ピロークを食べながらお祝いします。

 大きさや形はそれぞれですが、修了式のものは40×50cmほどの長方形。表面には美しい模様が施され、ピロークがテーブルの上に上がると、それだけで華やかな雰囲気になります。
 年に一度、ピロークが食べられるこの機会がとても楽しみです。

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2007年11月19日

グータラ猫のウラジオ日記7 教え子の宿題に励まされて

 こんばんは、グータラのお時間です。あ、前の話の続きですか?あれは、だめでした。結局嫌われちゃいました。
 なぜ?みなさん、ロシア人は散歩が好きで好きでしょうがない国民です、ご存知でしょうか。とにかく、歩きます。そこの景色が美しくなかろうが、道路に穴が開いてようが、天気が悪かろうが。てくてくてくてくてくてくてくてくてくてく・・・・。

露男『アロー、サーシャ(私のロシア名)。さあ、散歩に!!』
  私『ごめん、昨日さ、の、飲みすぎて・・・。家で休みたいよ』
露男『じゃあ、一時間休めばいいよ、それから散歩にいこう!』
  私『・・・。一時間じゃ良くならないよ(私の二日酔い)。どこかでお茶を飲もうよ』
露男『散歩は・・・できないんだ』
  私『ええ、散歩はできないわ』
露男『そうか、散歩できないのなら・・・』
  私『ごめんなさい、ふがいなくて(散歩ができなくて)』

 終わった。私が散歩をしなかったばっかりに。どうして1時間で治ろうか私の二日酔い。なぜカフェでお茶をするだけじゃ足りないのか。デロデロの二日酔い女子を散歩に連れて行って面白いのか?ロシア人に引きずられるように連れまわされる日本人女性(二日酔い)・・・。想像しただけでも恐ろしい。

 ということで、私のバカ話でした。今日はちょっと真面目なお話をしようと思います。
今、三年生の授業で『励ます・慰める』をテーマに授業をしています。で・授業で勉強したことと、以下の表現を使って、自分で状況を考えて会話を書いてくるように宿題を出しました。

ポイント― 相手の気持ちを受け止める
       (そうなんだ 大変だったね 分かるよ 等)
       慰める・励ます
       (私なんて、何回~か分からないよ だれにだってあるよ 等)

 次の会話は、ある学生が宿題として私に提出したものです。

宿題:会話
状況:ビカさんが解職されて、がっかりしている。友達のマリさんが励ましている。

マリ:ビカさん、どうしたの?気分が落ち込んでいるね?
ビカ:そう。実は先週末から会社の改造が行われたんだ。たから職員定数を少なくするために昨日、解職されることになっちゃった。
マリ:ふうん、そうなんだ。大変だったね。
ビカ:うん、でも今、失業するのは嫌なんだ!
マリ:でも、この解職は単に運がよくなかっただけだよ。だれにだってあるよ。あたしなんか今まで何回解職されたかはっきりわからないよ。
ビカ:そうなんだ。
マリ:そうだよ。そんなこと気にすることないよ。今にもっと良い仕事を見つけるチャンスがあって、次は長い間失業しないに違いない。
ビカ:うん、そうだね。なんかちょっと気持ちが軽くなったかんじ。ありがとう。
マリ:本当?よかった。じゃ、がんばってください。
ビカ:はいがんばります。
マリ:じゃ、また明日ね!
ビカ:また明日。

 この会話を見たとき、笑いが止まりませんでした。単語の意味とカジュアルな話し言葉が合っていないからです。
 しかし、すぐさわやかな気分になりました。きっと、彼女は通訳論や日本経済などの授業で、『リストラに悩むサラリーマン』のような記事を一生懸命読んで、訳して、単語を覚えて、それから会話の授業に応用できると思ったのでしょう。
 彼女は、他の授業で勉強したことも、会話の授業で覚えたこともおろそかにしない、本当に真面目でよい学生です。きっと将来はすばらしい日本語話者になるでしょう。

 ロシアで日本語講師をしていると、時々、学生はこんなさわやかな気持ちにさせてくれます。今までを振り返ると、自分はずいぶんいい加減な授業ばかりしてきました。彼女のように、私の授業をしっかりと聞いてくれている学生がいるのですから、一つ一つの授業をもっと大切に、慎重に行いたいと思うのです。
 何でもそうですが今の自分に満足していたら、そこからは何も変わらないものです。こんな風に思えるようになったのは、私を支えるのに大変そうな友達や仕事の先輩、頑張っている後輩、きゃわいい学生達、スネをかじられ過ぎた親。そして愛する恋人!・・・はいない!! とにかく、みなさんのおかげです。どうもありがとう。

071119.jpg でも・・・、これからも私の中のグータラは変わらないでしょう。『くそ~!なんだよぉ、いいこと言っておきながら』と思いの方、おほほ。人間の本質とはそうそう変わらないものです。そこは長~い目で見てやってください♪

 では、今日はここで。パカパカプ~。

極東国立総合大学附属東洋学大学 日本語講師 長谷川里子

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2007年11月13日

元気娘のウラジオ便り 卒業編

 10月18日、修士論文の公開審査が終了し、23日に卒業証書授与式でディプロンを受け取り、私寺越、晴れて卒業しました!!
 思えば長い道のりだった。何度荷造りしかけたことでしょう。何度寮内カフェサトコに愚痴を言いに行ったでしょう。サトちゃん、ごめんねえ。
 そういうわけで今回は、公開審査と授与式の模様をお伝えしたいと思います。
 まず公開審査ですが、時間をかけまくって書いた論文を手に、お偉いさん方数名の前で10分ほどで内容と結論を発表します。そして質疑応答となるわけですが……。
 何人かは審査の席に着くまで論文の表紙すら見てなかったらしく、「この子、何書いたんだっけ?」と、タイトルをその場で聞いてきた・・・やる気ないなあ。
 何はともあれ質疑応答にも自分の得意な分野の話ばかりでとっても楽しく受け答え。途中から余裕ぶっかまして笑顔にまでなっていました。しかし!!6・7問答えたときでしょうか。やっちゃったんです。「先制攻撃」と話すところを、「コンドーム攻撃」と・・・ほら、音が似てるじゃないですか。舌がもつれて、ついつい出たんです。イヤラシイおなごではないのです・・・テロリズムでどんな攻撃するんだろう・・・
 この発言のせいかどうかは分かりませんが、審査では最高点を頂き、無事に終了。
 いやっほう。どういう評価基準かは知りませんが結果よければすべてよし。

 23日は大学の創立記念日と兼ねて結構盛大な授与式になりました。いろんな表彰を兼ねていて、いろんな人が舞台にぞろぞろと並んで結構うんざり。
 そしてその合間に何処かの偉い人のスピーチと極東大学専属ダンサーズがここぞとばかり自分たちの才能を発揮してプロ顔負けのダンスと歌を披露。何でも彼ら、こういうときのために編成されている特別な学生らしく、授業にはほとんど出ないでレッスンをしているそうな。成果はしっかり現れてまして、筋肉の美しさは本当に惚れ惚れするくらいのものでした。
 ところで面白いのは舞台の周りのいたるところにあるフラッグ、ЕДИНАЯ РОССИЯの目標がずらずらと書かれているのですがそのうちのひとつに мы сохраняем цивилизацию РФ と書いてあり、大うけ。これ、ロシア連邦の文明を維持しますって言う意味なんですけど、10月末になってもまだお湯や水が出てない地域あり、暖房もついてなくて最近やたら停電するという環境で、文明を維持されても・・・できればさらに上を目指して欲しい・・・

 そうやってダンサーの筋肉に見とれて涎を垂らしながらフラッグに笑っているうちにやっと授与の順番が回ってきて、この時期の卒業生は普通いないため、私一人が舞台に立ちクリーロフ学長からディプロンを受け取ることに。サトコに着付けをしてもらった着物姿で、初の日本人修士課程修了者として壇上でディプロンを受け取りました。
 最初はさぞ緊張するだろうと思っていたのですが、何のスピーチもしないでいいと事前に言われていたため思った以上に落着いて壇上から観衆を眺めることができました。
 学部長や自分の論文担当教授の姿が眼に入り、彼らが今年の秋まで私の卒業をまったく信じなかったことを思い出して、したり顔。
 語学学校に通っててその日は私の姿を見るために最後まで授与式に残ってくれた日本人の方を見て、彼らがいつもいつも気遣ってくれたことを思い出して、笑顔。
 そして自分も「成績優秀者」の一人として受賞するために隣の席に座っていて、私の舞台での写真を撮ってくれたマーシャを見て、彼女の思いが伝わり、胸が熱くなりました。
 入学当時、専門の違いから学部の単位がまったく足りなかった私は最初の一年で5年分の単位をとらなくてはならず、2つの学年の授業を一気に通っていました。言葉も分からず、専門知識もなく、なによりも自分が何者かいまいち分からないため不安で、何のとりえもないアジア人に対して冷たい反応ばかり見せてくるロシア人の前でいつもおどおどしていた私に、最初に近づいてきてくれた子が彼女。本当に勉強家で、自分の勉強のためにですら時間が足りないのに、私の尋常でないレポートや試験勉強の量に同情し、いつも手伝ってくれて。理解できない理論やテーマがあると、分かるまでずっと説明してくれて、励ましてくれたのが彼女です。彼女がいなければとうの昔に帰国してました。
 ほかにも18日の公開審査から今日にかけて、いろんな人が祝福の電話をくれたり、電話したら本当に喜んでくれたり。その人たち、一人ひとりが私にとって本当に必要な人で、その人たちがいたからディプロンを手にすることができました。「一人だ」と感じたこともあったけど、本当はこんなにたくさん支えられてきたのだと実感。家族や友達はもちろんのこと、卒業してまでもずっと面倒を見てくれた函館校の方々や、仕事の任期を終えてもずっと付き合いを続けてくれたバイト、派遣先のみなさんに、そしてそのほか日本人、ロシア人でずっと卒業を信じて応援してくれた方々にこの場を借りてお礼を言いたいです。本当に本当にありがとうございました。

 こうして晴れて第一号の修士外国人となったわけですが、これが次に修士を目指す外国人にとって少しでも可能性が広がるための新たな道筋になれば幸いです。
 長い間ご愛読ありがとうございました。

極東国立総合大学附属国際関係大学政治科学・社会経営学部

6年  寺 越 弓 恵

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2007年11月08日

バイカル民話集5(最終回) オリホン島の王

オリホン島の王
Хозьяин Ольхона

とある島に、それはそれは恐ろしい洞窟がありました。島はオリホン島と呼ばれ、洞窟はシャーマン洞窟と呼ばれていました。その訳はモンゴル人の王ゲゲン・ブルハンと地下帝国の支配者でありブルハンの弟であるエルレン・ハナが住んでいたからでした。兄弟は残虐さを武器に、日頃から島の人々に恐怖を与えていました。この兄弟の恐ろしさといったら、シャーマンさえも怯えるほどでした。中でも、兄のブルハンは恐怖の王でした。この冷酷かつ残虐な男が地上に出る時、それは災いが起こる時である、と島の人々はわかっていました。罪のない多くの人々が血を流し、人々は苦しんでいました。
 一方、この島のイジメイ山の奥には街での生活を捨てた一人の賢者ハン・グタ・ババイが暮らしていました。彼はゲゲン・ブルハンの権力を認めず、見て見ぬ振りをし、山を降りてくることはありませんでした。人々は山の頂上で夜な夜な火をつけ、夕食に羊の肉を食べる彼の姿を目にしていましたが、山への道はなく、そこは人々にとって近寄ることのできない場所でした。ブルハンはババイを自分の支配下に置こうと試みましたが、結局、諦めることにしました。何度自分の兵士を山へ送りこんでも、山は誰一人として通しませんでした。勇気を出して山を登ろうとしたあらゆる兵士の頭上には、轟音と共に巨大な岩が落ちてきました。こうして次第にハン・グタ・ババイには誰も関わらなくなりました。

 ある日、ゲゲン・ブルハンが牧場の若い男の目つきが無礼であるとの理由からこの男を処刑するという事件が起こりました。男の妻は悲しみの涙を流し続けましたが、やがて、ゲゲン・ブルハンへの激しい憎しみが湧き上がってきました。そして、どうすれば自分の一族をこの残酷な支配者から救えるのかを考えるようになりました。彼女はイジメイ山を登り、ハン・グタ・ババイに島の人々の苦しみを伝えることにしました。彼には島の人々に味方し、ゲゲン・ブルハンを倒してほしいと思ったのです。
 この若くして未亡人となった女性は山へ向かって出発しました。驚いたことに、多くの優秀な兵士さえもが山を登れなかったのに、彼女はいとも簡単に登りきりました。イジメイ山の頂上に着くまで、彼女の頭上に岩は一つも落ちてきませんでした。この勇敢で自由を愛する女性の話を聞き終わると、ハン・グタ・ババイはこう彼女に言いました。
「よろしい、私があなたとあなたの一族を救いましょう。あなたはすぐに町へ戻り、このことを島のみんなに伝えなさい」
 彼女は大変喜びながら山を降り、ハン・グタ・ババイの言った通りにしました。ハン・グタ・ババイはある月の見える夜に雲に乗ってオリホン島の街へやって来ました。彼は地面に耳を近づけると、下からゲゲン・ブルハンによって罪のない人々が苦しめられている悲鳴が聞こえてきました。
「確かに。オリホンの大地が不幸な人々の血によって満たされている。」激怒したハン・グタ・ババイは誓いました。「必ずやゲゲン・ブルハンを倒して見せる。だだし、そのためには君たちの協力が必要だ。私が合図したら、地面を赤色に染めるのだ!」
 そして朝方、彼はシャーマン洞窟に向かいました。怒りに燃える支配者は彼を迎えるため洞窟の外に出てきて、尋ねました。「何のためにここへ来た?」ハン・グタ・ババイは静かに答えました。「お前にはこの島を出て行ってもらいたい」ゲゲン・ブルハンはさらに激怒しました。「それはありえん話だ!私はこの島の王だ!ならばお前を片付けるとしよう」
「お前など怖くはない」ハン・グタ・ババイはあたりを見回しながら言いました。「お前を倒す方法ならあるのだ!」ゲゲン・ブルハンはあたりを見回すと、驚きのあまり叫びました。すぐそばに島の人々が集まっていたのです。「お前は我々と戦でもしようというのか?」
「そんなつもりはない」とハン・グタ・ババイは静かに答えました。「これ以上血を流す必要がどこにあるのだ?私とお前で決着をつけよう。それが一番いい方法だ!」
「いいだろう!」
 2人は長時間闘い続けましたが、どちらも優位に立つことはできず、力は全くの互角でした。結局その日は決着がつかず、次の日に賭けをする事にしました。容器に土を入れ、眠る前にその容器を自分の足元に置く。そして次の日に土の色が赤色に変わっていたら、島を出て行く。もし土の色が変わっていなかったら、島を自分のものにできる、という取り決めをしました。次の日の夜、二人は約束通りシャーマン洞窟の中でそばに座り、土を入れた容器を足元に置き眠りました。

 夜になり、地下世界の支配者であり、ゲゲン・ブルハンの弟であるエルレン・ハナの影が現れました。影はゲゲン・ブルハンの容器の土が赤色に染まっている事に気づきました。エルレン・ハナはすぐにその容器をハン・グタ・ババイの物と取りかえました。しかし血はエルレン・ハナの影よりも濃く、朝日が洞窟に差し込んできた時、ハン・グタ・ババイの容器の土は消え去り、ゲゲン・ブルハンの容器の土は真っ赤に染まってしまいました。そしてその時、二人は目を覚ましました。土はハン・グタ・ババイとの約束を果たしたのです。
自分の容器を見たゲゲン・ブルハンは大きく息をしました。
「さあ、この島はお前のものだ、そして私はこの島を出て行く」
ゲゲン・ブルハンは家来のモンゴル人たちに、速やかに財産をラクダに乗せ、住居を分解してしまうように命令しました。夜になり、ゲゲン・ブルハンは皆にもう眠るようにと命令しました。そしてエルレン・ハナの強い影によって持ち上げられたモンゴル人たちはラクダと財産と共にバイカル湖の奥地へと飛ばされました。朝、彼らが目覚めると、もうすでにそこはバイカル湖の岸でした。しかし島に残されたかわいそうなモンゴル人たちもたくさんいました。彼らこそが、現在この島に住むオリホンブリャートの祖先だと言われています。

訳:ロシア極東国立総合大学函館校

  講 師  工 藤 久 栄

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2007年11月07日

今年のロシアまつりTシャツは?

 毎年ロシアまつりではオリジナルTシャツをつくります。今年のデザインは、テーマ「ロシア民話の世界」に合わせてババ・ヤガ(ロシア民話に登場する魔女)のイラストと、“Русский праздник Хакодатэ(はこだてロシアまつり)”の文字。いつものようにデルカーチ先生によるものです。
 当日は学生・教職員ともこれを着て、みなさんのご来校をお待ちしております。
 数に限りがありますが、販売もしておりますので、お気に召しましたらキオスクコーナーまでどうぞ。

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2007年11月02日

みんなでペリメニ作り

 来る11月10日(土)の第10回はこだてロシアまつりに向け、恒例のペリメニ(ロシア風餃子)を作りを行いました。
 年に1度、この日は教職員も学生も、ウラジオストクから来ている留学生たちも、みんなで食堂に集まり、ひたすら生地を捏ね、愛を込めて包みます。
 指導してくださったのは在札幌ロシア連邦総領事館函館事務所のブロワレツ・ガリーナさんとはこだて未来大学の教授夫人であるリャボワ・イリーナさん。材料はひき肉とたまねぎでとてもシンプルですが、塩茹でするととてもおいしいロシア家庭の味です。
 この日作ったのは約1,700個。早速冷凍され、まつり当日みなさんに食べていただくのを待っています。熱々の茹で上げと、冷凍のお持ち帰り用がありますので是非いらしてくださいね。

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2007年11月01日

バイカル民話集4 魔法の角

魔法の角
Волшебные рога Огайло

 昔々あるところにガンボとバドマという双子の兄弟が住んでいました。二人の村はバイカル湖の近くにあり、母親も一緒に住んでいました。彼らの木でできた五角形の家の中は、大鹿や山羊やトナカイの角で飾られていました。兄のガンボはその地で一番腕がよく、勇敢で強い狩人として知られていました。しかし、弟のバドマは小さい頃に病気にかかり、ずっと動けず、獣の皮でできたベッドに寝たきりでした。ガンボは弟のことが大好きでした。バドマも兄が好きでしたが、よくこんなことを言っていました。
「僕だって兄ちゃんやおっかさんのために役立ちたいなあ」
「心配しないで、バドマ、お前の病気は必ず治るよ」
「ダメだよ、僕はもう起き上がれないみたいだ。二人の重荷になるんだったら、死んだほうがマシだよ」
「そんなこと言うなよ、俺やお袋の気持ちはどうなるんだよ。病気が治る時は必ず来るから今は我慢しろ」
 ガンボがまた狩りに出ようとした日に、彼は弟にこう言いました。
「山で羊を捕って、新鮮な肉を食べさせてやるからな。留守を頼むよ」

 そのころ、バルグジン山脈の密林や崖に大きな雪羊がたくさんいて、ガンボはそれを獲物にしていました。長い間歩くと、大きな岩に挟まれた谷に出ました。すると、崖の上に大きな雪羊がいました。なんと大きくて、しなやかで強そうな羊でしょう。頭には大きな太く曲がった角があり、その角はこの羊がずいぶんと長く生きていることを物語っていました。雪羊の角には木の様な年輪があり、一年ごとに増えるのです。
 ガンボは銃を上げると、狙いを定め撃ちました。しかし、羊は立ったままガンボの方を一度見ただけでした。ガンボは再び撃ちましたが、羊は頭を震わせただけで、穏やかに周りを見ると、崖をゆっくりと登って行きました。ガンボはびっくりしました。今まで一度も自分の腕を疑うことはありませんでしたが、今回は一体どうしたことでしょう?不思議で仕方がありませんでした。ひょっとして、あの羊は不死身の魔法の羊ではないだろうか?
「その通りさ」
 崖の峰から声が響きました。
「あれは森の神ヘテン様がお飼いになっている羊のオガイロさ。人間であいつを見たのはお前が初めてだ」
 ガンボは上の方に目を向けさらに驚きました。たった今、雪羊が立っていた所に山猫の毛皮を身にまとった、若く、美しい娘がいました。
「君はいったい何者だ?」ガンボは勇気を出して尋ねました。
「私はヘテン様の使いのヤンジマ」と娘は答えました。
「言っておくけど、オガイロを追うのは無駄よ。だからお止めなさい。後悔するだけよ。捕まえてどうするつもり?オガイロの角が無くてもお前は強くて元気な男じゃないか?」
「角?何のことだ?」ガンボは気になって聞きました。
「分かってるくせに」ヤンジマは笑いました。「お前は誰よりも強くなりたいから角を手に入れようとしているのでしょう?」
「さっぱり分からない」ガンボは言いました。
「当然の事よ。オガイロの角は人間に力と健康を与える魔法の薬なのだ。それを持っている限り、オガイロ自身も不死身なのさ。痛い目に逢わないうちに帰った方が身のためよ」
 ヤンジマはそう言うと岩の隙間へ姿を消しました。ガンボはしばらく考えた後、その場を去ることにしました。ガンボが立ち去ると、ヤンジマが再び現れ、黄色い布を振りました。すると空に銀色の雲が現れて、その上には肩に毛皮をかけた朝日のように輝いている絶世の美女が乗っていました。美女は雲から降り、ヤンジマに言いました。「どうしましたか?」
「光り輝く女神、密林の支配者ヘテン様。オガイロを狙うたくましい狩人が現れました。オガイロが捕まったら大変です」
「魔法の角を手に入れたいのですか?」へテンは言いました。
「悪い人だったらどうしましょう?」
「ヤンジマ、オガイロの角が人間の手に渡る事を絶対に許してはなりません」
 そう言うとヘテンは雲に乗り、消えて行きました。

 ガンボは約束通りバドマに新鮮な肉を持ち帰りましたが、とても気が重かったのです。「魔法の角を持った羊を何故逃がしてしまったんだ?それを手に入れれば大事な弟の病気も治るのに。必ず手に入れてみせるぞ!」と自分に誓い、また狩りへ出る前に母に言いました。
「お袋、バドマを守って、励ましてやってくれ」
 ガンボは狩りの道具を持ち、バイカルの岸を歩きました。するとすぐに風が吹き、ほとんど歩けなくなりました。「何かが俺を止めようとしている」とガンボは思いましたが、諦めずに前へ進みました。それがヤンジマの仕業だと彼は知る由もなかったのです。長いこと歩き、ガンボは松の森へ入りました。すると森の木々は枝を伸ばし、彼を捕らえようとしました。そして岸から飛んで来た砂も彼の目に入りました。松の木々はガラガラと音を立て、ガンボを捕らえ、バイカル湖へ投げ込みました。ガンボはバイカルの冷たい水に落ち、湖の底へと沈んで行きました。すると深海に住む透明な魚ゴロミャンカ達が集まり,ガンボの体に噛み付きました。しかしガンボはここでも諦めず、魚達を一つの群れに集め、水面に運ぶように命じました。
 水面へ上がるとそこにはバイカルアザラシがいました。ガンボは一番大きなアザラシの後ろ足を掴み、岸まで無事に運んでもらいました。ガンボは旅を続けました。暗い森を抜けると、明るい谷間へ出ました。ようやく歩きやすくなりました。しかし夕方になると、谷間に真っ黒な雲がかかり、辺りは見えにくくなりました。空を見上げ、ガンボはぞっとしました。雲の中に長いひげときらめく眼を持った大きな顔が現れました。恐ろしい声が響きました。
「頑固な狩人よ。家へ帰るのだ。さもないとワシは雨を降らせ、お前はびしょ濡れになり、寒い夜に凍え死ぬ事になるぞ」
 ガンボは笑って答えました。「無駄だ、怖くなんてないぞ」
 その瞬間、稲妻が光り、雷が鳴り、土砂降りになりました。ガンボはこれまでこんな大雨を見たことがなかったが、恐怖に負けませんでした。衣服を脱ぎ、朝まで体をこすり、温めました。夜が明けると、雨は止みましたが今度は突然濃い霧がかかりました。その霧の中から長く真っ白なひげの頭が現れ、冷たい声で言いました。
「頑固な狩人よ。家へ帰るのだ。さもないとお前の首を絞め、息の根を止めるぞ」
 すると霧の中からガンボの首をめがけて、長い手が伸びました。
「いやだ、負けるものか」とガンボは叫び霧と戦いました。
 1時間そして2時間戦い続けると、霧は諦め、逃げ出しました。今度は青空から桃色の衣を着たヘテンが雲に乗って現れました。
「たくましく強い狩人よ。なぜオガイロの角を狙っているのだ?角がなくてもお前は充分強いだろう?」とヘテンはガンボに言いました。
「この方は密林の女神ヘテン様に違いない」そう思ったガンボは、心を開き答えました。
「自分のためじゃなく、病気の弟を助けたいのです」
「それはよい事です」ヘテンは顔を輝かせ言いました。「他人を助ける事はすばらしい行いです。つまり、おまえは善人です。名前は何と言うのですか?」
「狩人のガンボです」
「ガンボ、ならば探し続けるがよい」ヘテンはそう言うと岩の向こう側へ姿を消しました。
「美しい女神ヤンジマ様」ヤンジマがヘテンを迎えました。
「あの頑固な男を止めようと私にできることは何もかもしたのに、彼はどうしても諦めないのです」
「あの男に魔法は効きません」ヘテンは言いました。
「正直言うと、私はあの男が気に入ってしまいました。彼の強い意志は私の心を惹き付けたのです。私は強く立派な人間が好きなのです」
「ヘテン様、何を言っているのですか」ヤンジマは叫びました。あのよそ者に魔法の角が渡ってもよいのですか?あれはあなただけの物でしょう!」
「その通りです、ヤンジマ。でも仕方がないのです。あのたくましく、力強い狩人に私は惚れてしまったのです」
「ヘテン様、よく考えてください」ヤンジマは叫びました。
「あなたは彼に勝てる力を持っているじゃありませんか?それでも彼はあなたの愛に釣り合うほどの男なのですか?」
「そうです」ヘテンはきっぱりと言いました。「彼をこちらまで来させましょう。その後で様子を見るのです」

 ガンボは暗い森、流れの速い川、鋭い岩を越えて目的地へ近づいて行きました。やがて見覚えのある谷間が見えてきました。高い崖の上を見て、ガンボの息は止まりました。あの不死身の雪羊が以前のように穏やかに立っていました。「オガイロだ」ガンボはドキドキしました。
「今度こそ逃がさないぞ。何としてもお前の角を手に入れ、弟にあげるんだ。そうすればバドマは元気で力強い男になれるんだ」
「無駄なことは止めなさい、ガンボ」岩の隙間からヘテンの声が響きました。「こちらへおいでなさい。あなたに魔法の角を与えましょう」
 それはガンボが予想していなかったことでした。心を震わせ、彼はおとなしく崖を登りました。「オガイロを見て何か気づきませんか?」とヘテンが訊きました。オガイロの方を見ると雪羊の頭には普通の角が生えていました。そして、魔法の角はヘテンが持っていました。
「善い人の善い行いのために差しあげましょう」
「なんとお優しいお方だ。感謝の気持ちで心がいっぱいです。このご恩をどうやってお返しましょう?」
「恩返しをするのは私の方かもしれません」とヘテンは言いました。
「一体誰に?」
「私のオガイロにです」
 ヘテンは雪羊に近づき首を抱きました。
「なぜ彼に恩返しを?」ガンボは尋ねました。
「だってオガイロは私とあなたを引き合わせたんですもの」
 ヘテンが黄色い布を振ると、空から雲が降りてきました。
「みんなであなたの家へ行きましょう」とヘテンは言い、「大事な衣を持って来るのを忘れないで」とヤンジマに言いました。
 三人は雲に乗り空に浮かびました。空の下には密林が広がり、銀の糸のように川が伸びていました。そしてオガイロは崖に立ち三人を見送っていました。
「さよなら、オガイロ」ヘテンは手を振りました。「恩返しとしてあなたには決して狩人の立ち入れない山をあげましょう。そこで仲間たちに囲まれ,安全に暮らすがよい」
 バイカル湖が見えてきました。ガンボが空の下を見ると、家の前で母親が空を見上げていました。
「俺たちを迎えてくれているんだ」とガンボは言い手を振りました。
 雲が下がって魔法の角を持ったガンボが降りました。桃色の毛皮を身にまとったヘテン、山猫の毛皮を身にまとったヤンジマが降りると雲は消えました。
「大好きな私の子供たち、帰って来てくれて嬉しいよ」と母親は言いました。「家にお入り」
ガンボは寝たきりの弟の方へ駆けつけました。「ほら,バドマ、雪羊の角を持って来たぞ。これでお前は強くなるんだ」
そう言うと弟の寝台の壁に角を掛けました。

 一ヶ月が過ぎました。その間にバドマは起き上がり、元気で強い男になりました。家族はバドマの快復を祝いました。ある日、ヤンジマは山猫の毛皮を脱ぎ、美しい金色の衣を身にまといました。その衣のおかげで彼女はさらに美しくなりました。そのヤンジマの姿を見ると、バドマは感動しました。
「ヤンジマ、君は世界で一番美しい花だ。一生に一度でも見られれば幸せだ」
「一度だけでいいのかしら」 ヤンジマは笑いました。

 まもなく、その一家では二つの結婚式が挙げられました。ガンボとヘテン、そしてバドマとヤンジマはその日世界で一番幸せでした。それからずっと彼らは魔法の角を狙うたくましい狩人を思い出したり、不死身の雪羊オガイロに感謝の気持ちを示しながら暮らしました。

訳:ロシア極東国立総合大学函館校

ロシア地域学科4年 松井 唯寧
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