FMいるか 多言語みんたる 4
FMいるかで放送された ONE WORLD WAVE「多言語みんたる」の内容をご紹介する最終回です。
ゲスト:ロシア極東国立総合大学函館校
教頭 アニケーエフ・セルゲイ(以下アニ)
聞き手:財団法人 北海道国際交流センター
事務局長 池田 誠(以下池田)
<12月23日放送 第4回 ロシアと日本の違いとは?>
池田:こんにちは!
アニ:Добрый день(ドーブルイ ヂェーニ)!
池田:今回4回目ということで最終回になるんですが、本当に今までいろいろと楽しい話をお伺いして、僕はロシアについてずいぶん認識が変わりました。アニケーエフ先生は日本に来て10年ということで、ずいぶん日本に慣れたと思うのですが、最初に来て、「これはびっくりしたなあ」ということはあるでしょうね。
アニ:ありましたね。
池田:例えば、車を運転すると思うんですけれども、左右逆ですよね?その辺も緊張しますよね。
アニ:函館で免許を取った後、初めて乗ったときは、一度だけ反対の方向へ行ってしまいまして、大変でした。びっくりしました。だから慣れるのにちょっと時間がかかりました。
池田:学校も坂の上にありますから、坂道発進とかね。
アニ:いえ、坂道はウラジオストクも坂ばかりです。函館と違ってウラジオストクの坂道は、冬はほとんどアイスバーンなんです。スパイクなしで上れないです。
池田:うわー!もちろんロードヒーティングにはなってないですよね。
アニ:ないです。だから自然そのまま、雪が降って凍ってしまって、仕方ないです。ただ砂を撒くしかないです。手段としてあまり良くないと思うけれども、みんなスパイクを使っています。禁止されてないです。
池田:上りはいいですけど、下りが怖いですよね。
アニ:大変です。冬は事故も多いです。少しでも雪が降ってきたら、ウラジオストクはほとんど交通が麻痺します。雪は積もらないけれどもすぐ融けてしまって氷になる。スケート場です。
池田:それは怖い。
アニ:怖いです。私もウラジオストクにいて一番怖かったのは冬です。車に乗るとき。
池田:なるほど。今回日本とロシアの違いということで、お話をお聞きしたいんですが、ロシアの方はよく毛皮の帽子みたいのを被ってますけど、あれは皆さん被るんでしょうか。
アニ:ロシアは日本と違って冬が長いでしょ。例えばモスクワ辺りは9月終わり頃から雪が降ります。雪が降ったらもう融けないです。カレンダー上の冬は12月、1月、2月でしょ?でもロシアでは4月終わりまで、まだ雪が残ります。
池田:9月から4月まで。
アニ:半年以上ありますね。だから寒いときは厚いコートや帽子を被るのは普通です。函館に来てびっくりしたのは、日本人は夏に帽子を被りますね。
池田:被りますね、日焼けしないようにとか。
アニ:ロシア人は絶対しません。帽子なしで、そのままです。だから日本人は冬は帽子を被らないで、夏は帽子を被るって、逆さまですね。
池田:ああ、たしかに。
アニ:びっくりしたところです。それとロシア人の女性は必ず厚めの衣服を着ています。日本人の若い女の子は、特に函館の子は下は裸足に近いじゃないですか?びっくりしました。
池田:冬でもそうですもんね。
アニ:そうですね、特に高校生なんかミニスカートとか。
また、私がびっくりしたのは冬にちっちゃい子どもを抱えて、結構寒い体育館に集まって、そのちっちゃい子どもは裸足で歩いていますね。ロシアでは絶対にやらせないことです。子どもには必ずソックスとか靴を履かせる。日本人の子どもは裸足そのままで、それはショックでした。
池田:ああ、そのへんは結構違いがありますよね。ロシアでは子育ての仕方とか、どうなんでしょう。日本との違いなどなかなかわかりづらいと思うのですが、お子さんも小さいときからこっちに来てるんですよね。
アニ:そうですね、うちの一番下の子は5歳から函館にいます。だから幼稚園も日本の幼稚園で、そのグループと一緒にそのまま弥生小学校へ。今は高校生ですけど。
池田:勉強なんか違いますかね?
アニ:私が親として気づいたのは、日本の教育制度は大変やわらかいというか、子どもにやさしすぎます。ほとんど要求されるということはないです。強制されるとか、させられるということはあまりないです。ロシアでは義務というよりやむを得ないこと、たとえば必ず勉強しなければならない、宿題も多いですね。日本の学校ではあまり課題とか宿題とか、予習とかはない。私はうちの子が一生懸命勉強した光景は見なかったです。
池田:あら!
アニ:ほとんど遊び場みたいです。
池田:お子さんによって違うかもしれないですけどねー。でも、昔よりは緩やかになってきているかもしれないですね。それがいいのかどうかはわかんないですけどね。
アニ:子どもに対する日本人の態度は非常に優しいです。ロシアでは親子の間は厳しい。主と従ですね。従う人と従わせる側ですね。子どもは従う、親は従わせる。親は厳しく、要求的です。だから子どもは親とよくけんかします。けんかするというのはロシアの日常なんです。日本人はけんかするのは恥だと思います。ロシア人は自己主張が強いので、なんでもないことと思っています。だから別に人前でもけんかしたりしますよ。
池田:でも自己主張は意見が違うから言うだけであって、けんかではないんですよね。
アニ:でも日本人が見ると、それはロシア人はけんかしているのではないかという印象を受けると思いますね。だから言葉自体、日本語は本当に話す人の気持ちを推し量ることに慣れていますね。ロシア人はまず自分の意思、自分の気持ちを相手にすぐにでも伝えたい。その意味で日本語と違う点は、ロシア語は攻撃的な言葉じゃないかと思います。
私が言語学者として気づいたことがあります。日本に来て、一生懸命日本人とコミュニケーションをとろうと思ったんです。だから最初から函館の人に日本語で話そうとしたんです。そのときの日本人の反応は、ショックを受けているんです。日本語で話しかけたところ、返答は英語でした。その日本人は目を大きくして、私の顔をずーっとじろじろ見ながら。私には何が起こったかわからないですけど。どうして日本人は外国人が日本語をしゃべるのを不思議に思うか。あまり好きじゃないという印象ではなかったけれども。日本人は突然日本語で話しかけるとびっくりします。日本人のほうが驚くんです。
池田:びっくりしますよね。しかもロシアの人で、ヨーロッパの人でね。日本人は話しかけられるとすべて英語で答えなくちゃと思いますよね。
アニ:ロシアでは顔は東洋的な顔でも、ロシア語で全部疎通できますね。日本では日本人でないと日本語を使ってはいけないという印象を受けました。だから外で困ったときには日本人にあまり質問しないことにしています。
池田:いや、是非いろいろと話していただいたほうがいいと思うんですけど。やっぱり違いがありますね、国民性というのもあるでしょうし、文化的な部分も違いますしね。でも日本にずっといらっしゃって、ここは日本がいいな、って思うところはありますか?
アニ:治安がいいです。落ち着く場所です。ロシアではなぜか毎日問題が起こります。問題を解決することでロシア人の生活はいっぱいです。朝から晩まで。日本では仕事に出かけて帰るだけで終わりです。あとは家でのんびりごろごろテレビを見ながらで大丈夫じゃないですか。ロシアではほとんど家にいてゆっくりする時間がないです。例えば必ずロシアでは車を置く車庫を作ります。レンガ造りか、鉄で作るか。それは自分の力で作ります。
池田:盗まれるかもしれないということですね。
アニ:そうです。盗まれることはよくある話です。10分間置いておいたらもうないです。
池田:日本ではエンジンかけっぱなしの車とか、よくありますよね。
アニ:キーをかけないでそのままで置いておくじゃないですか。今は私も時々そうします。私の心の中も落ち着きすぎたじゃないですか。
池田:すっかり日本人になっちゃいましたね。まあ、でもそういう意味ではまだ治安がいいのかもしれないですね。
アニ:とても住み心地もいい。函館は特に自然そのままで。ウラジオストクは郊外へ行けば自然も見られるけれども、函館は町の中もとってもきれいで、庭の中に住んでいる感じです。私は子どもの頃から緑が好きで、だから函館はいいところです。天国です!
池田:いいことを!今回4回に渡ってロシアの話をお聞きしましたが、本当に楽しかったです。ありがとうございました。
アニ:До свидания(ダスヴィダーニヤ・さようなら)!