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2006年09月11日

“根室”という不思議

根室市―人口:3万1500人、主な産業:漁業、北方四島返還運動が盛んに行われていて、北海道最東端の納沙布岬からは天気のよい日には北方四島が望め…。
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ここ最近、世間を賑わせている根室市だがデータの上ではこんなところであろうか。ただ、この町にはデータ上では表れない不思議な雰囲気がある。

今年の夏、念願叶って根室市への旅に出た。
明治の北海道開拓時代、3つの町に拠点が置かれ開拓は進む。函館市は「北の玄関口」として、札幌市は「計画的中心都市」、そして根室市は「水産業の拠点」に。根室市は知る人ぞ知る、北海道では古い歴史を持つ町なのだ。北海道の他のどの町とも違う、特異な、真のオリジナリティを持つ町だ。

なぜか…?おそらく、理由の一つは「行き止まりの端文化」。今一度、地図で根室市の位置を確認してもらいたい。見事な程、端に位置している。もしかすると、根室には北海道札幌から放たれる空気が届かないのでは?忘れ去られたかのように根室市には根室市の時間が流れ続けているような気がする。

二つ目の理由が根室こそ、「国際都市」と呼べるかもしれない。ご存知の通り、根室市にはロシアの漁船が毎日のようにやって来る。ロシアとの漁業で生計を立てている住民は珍しくない。町にはロシア語の看板があふれ、「○尾ジンギスカン」さえもロシア語で…。目を疑う光景だ。早い話が「ロシアっぽい」のだ。ロシアからの風は確実に根室に浸透している。しかし、もちろんロシアではない。ロシアとも違う、北海道とも違う、何か懐かしい、2006年の日本ではないかのような空間。と思いきや、町には「北方四島返せ、コノヤロー!」ぐらいの勢いの看板がずらりと並び、その返還運動の熱の高さを物語る。と思いきや、「ニ・ホ・ロ(北方四島交流センター)」の質の高い日露文化展示品の数々。「交流」の名にふさわしく、日露の文化を両国の言語を用いて詳細に紹介している。

夕暮れに納沙布岬から北方四島を望み、「FM根室」を聞きつつ、根室市街に戻るため車を走らせた。すると、「日本で一番東端の学校」の看板を目にした。続いて、このような名前がついているかどうかは定かではないが、「納沙布盆踊り」で、暗い中、やぐらを取り囲み、盆踊りを踊る人々の小さな輪があった。なんとも言えない、渋い光景。北海道の遠く、東の端で、人々の暮らしが続いている。

根室は不思議な町だ。ロシアに不思議さを感じている皆さんは、ぜひ一度、この不思議な空間に行ってみてはいかがでしょう?

ロシア極東国立総合大学函館校 講師 工藤久栄

日本にいながらロシアの大学へ!ロシア極東連邦総合大学函館校
ネイティブのロシア人教授陣より生きたロシア語と
ロシアの文化,歴史,経済,政治などを学ぶ、日本で唯一のロシアの大学の分校です。

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コメント

根室か・・・。
実際にその人の立場でなければ語れないものがある。
島で生活をした人々、漁業を営む人々、交流に携わる人々、そしてロシアの人々。
ロシアとのつながりがいろいろな形のなかに存在する街。

あっロシアが見える!!
近すぎる灯台、あの傾きがロシアなのだ。
でも日本じゃない!!近すぎる・・・。

ロシア風クレープといわれるブリヌィを生乾きにしたかのような、根室の名物「オランダせんべい」を不思議の街に来た気持ちになりながらお召し上がりください。


コメント

2chの北方領土スレを見て欲しい。
暴力的に奪い返せと煽る連中の多いこと、多いこと。
また東京で行われる返還運動がナショナリズムを鼓舞するために利用され、現実味を失った政治集会に堕落していること。
あういうのを見るにつけ絶望的な気持ちになる。

領土問題をめぐる根室の人々の苦悩と忍耐、自制心の強さ、優しさと希望に満ちた選択は、実に尊敬に値します。

我が国の領土問題について実際に返還運動に関わっている者と、東京で作られている世論のズレは、この国の言論界がいかに不健全であるか教えてくれます。

根室の人々の本当の声、領土問題に翻弄されている人々の願いに、政府も世論も耳を貸すべきだと思うのですが・・・。

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